東京ふうが71号(令和4年秋季号)

韓国俳句話あれこれ 16

本郷民男

▲ 木浦の女性俳壇

 『ホトトギス』では、大正2年から、女性だけの俳句欄が設けられました。韓半島では、昭和2年3月に木浦モッポで創刊された『カリタゴ』4月号に「婦人俳壇」が設けられたのが最初です。今回はそれを中心に、女性俳壇を見て行きます。木浦は半島の西南部の港湾都市で、米や木綿を日本へ運ぶべく、居留民が住んでいました。
「婦人俳壇」の創設者は、原三猿郎(丈一郎・1887~1930)です。福岡県浮羽郡江南村(現うきは市吉井町)の旧家に生まれ、福岡師範を卒業した小学校教員です。大正14年1月に木浦公立小学校の教員となりました。俳句には小学生時代から親しんでいました。木浦の『木浦新報』に「自然のふところ」という俳句欄を設け、選にあたりました。木浦は旧派の俳諧の地でしたが、ホトトギス流の俳句をもたらし、『カリタゴ』創刊を促した人物といえます。

▲ 『カリタゴ』第二号の二三、二四頁

 奥さんあなたは今何をなさつてお出でですか。お針ですか。この暖かい三寒四温に障子をしめ切らないで少し開いてお針疲れの目を庭先にお移しになつて御覧なさい。…水仙に見ほれた態度それがまさに俳句…
嬢さんあなたは今なにをなさつてゐますか、女學校から帰つて勉強がすんでこれから臺所にお母様のお手傳いですか。…
「雛撰句」
そそくさと廚しまへり雛祭り   田中蔦女
揺るる灯や雛各々の目の潤み  日守喜美女
色あせし内裏雛尚床しけれ   奈良月兎女
母の雛も交へ飾りて賑はしき   立花乙女
わび住みの飾る雛もあらざりし  原邦代女
置床に飾りて雛や假住居    高田夫佐女
うつとりとただ雛壇に向かひけり  春湖女
足折れしひいな労はり飾りけり 井上たか女

 


(つづきは本誌をご覧ください。)