素十俳句鑑賞 100句 (6)
蟇目良雨
(36)
秋風やくわらんと鳴りし幡の鈴
大正12年12月 虚
村社のはた幡に結ばれている鈴が秋風により「くわらん」と鳴ったことを写生。秋櫻子と吟行して、はじめ「がらん」と鳴ったと書いたものを秋櫻子が添削をして「くわらん」になり「ホトトギス」に投句したら入選したという記念作品。初心者らしい素直な句作り。
(37)
元日や新苫かけてもやひ船
大正13年3月 虚
関東大震災の翌年の作品。東京には船上生活者が昔からいたが、震災で家を失った人がもやい船に住処を求めてその数を増やしていたので素十が気になったのかも知れぬ。
貧しい船上生活であるが新年だけは新しい苫(芦などで作った筵状のもの)を掛けていて気持ちがいいとエールを送っている。
(38)
帆上げたる水尾ごう〳〵と東風の船
大正13年5月 虚