東京ふうが67号(令和3年秋季号)

コラム はいかい漫遊漫歩 『春耕』より

松谷富彦

144 落花生老婆の口に三時間
斜断鬼(立川左談次)

 三魔(宗匠 山藤章二 イラストレーター) 合評会、ツッコミ会を始めます。
落花生老婆の口に三時間
斜断鬼(立川左談次 噺家) わが作ながら名句だねぇ。
三魔 ほんと、まさに駄句の傑作。「名駄句」です。
風眠(高田文夫 放送作家) 〝メイダク防止条例〟(笑)
三魔 本(句集『駄句だくさん』山藤章二・駄句駄句会編 講談社刊)の説明をする時に、この句を言えば、もうほとんど本書のコンセプトが通じる。
斜断鬼 つーことは、他の句は要らないってこと(笑)
駄郎(吉川潮 作家・演芸評論家) バカは褒めると、すぐつけあがるからね(笑)
粕利(橘右橘 寄席文字書家・芸能プロダクション社長) これ、死後三時間じゃないの。
三魔 そうそう、生きているとはかぎらない。それもたぶん歯じゃなくて土手で噛んでた。
*     *     *
こんな調子でページが始まる〈 日本ではじめてのC級句集 駄句、この粋と恥。全113句、ツッコミ大合評会。山藤章二宗匠率いる雑排句会「駄句駄句会」の奇才・珍才。互いの辛口・甘口・大脱線批評を満載した傑作選!〉と〝腰巻〟に謳う珍本から珍句、迷句を抜き書きでご紹介。
まずは2013年刊の同句集、山藤宗匠の「まえがき」から抜粋――〈(駄句駄句会を)二十年やっているから、駄句が溜まった。世の中には名句秀句の本がいっぱい出てるけど、駄句ばかり集めた本、てぇのがない。俳句本の棚に置いとけば、世の中にはボンヤリしたやつや変わり者、万引き少年なんかが持ってゆくかも知れない。〉
そして、駄郎(吉川潮)同人の「あとがき」からも抜き書き――〈 同人の名誉のために言っておくが、たまには「どこの句会に出しても恥ずかしくない名句」が詠まれることだってあるのだ。ところが、その手の名句は抜かれず、「どこの句会に出しても恥ずかしい駄句」ほど点数が高いのが我が句会の特徴である。従って、本書には(同人の)自選句の中から宗匠が選りすぐった駄句が多く収められている。「駄句だくさん」という題名の訳にガッテンして頂けたでしょうか。〉
衣替え私の彼は左前
三魔 面白い。ピタリ決まってるね。「左前」って、ひとつは和服の常識がない人の着方。もひとつは経済状態が良くないひと。これどっち?
斜断鬼 私はね、日韓友好かと思ったんだけど。
寝ん猫(木村万里 演芸プロデューサー) えーっ、何なの、それ?
斜断鬼 向こうの着物は左前なんだよ。
喫蟲(松尾貴史 俳優・テレビコメンテーター) あ、チョゴリですね。
斜断鬼 そうチョゴリ。新大久保よく飲みに行くから。
駄郎 俺はそんなつもりで詠んでないよ。麻丘めぐみのパロディ。♪私の彼は左利き~
風眠 なんだ、国際的な句だと感心してたのに(笑)

(つづきは本誌をご覧ください。)