季刊俳誌東京ふうが通巻22号

東京ふうが 22号(平成22年 夏季号)

ニーハオ中国俳句の旅 8

「晩秋成都」

蟇目良雨

台風21号接近で東京は朝から小雨が降る。九州・四国はこの台風で相当な被害があったとニュースは報じていた。これから「春耕」の仲間と中国四川省成都に出かける。往復とも中国東方航空を利用。午後1時50分成田空港発(MU534)午後3時50分上海浦東空港着。翼下は台風のものであろう雲海ばかりが続く。
機内で、今朝乗ったリムジンバスのPR 誌(via)に載っていた。

The Autum wind blows through 秋風の吹く
little pines, a lovely name, 小松とはいとしき名
Bush Clover and pampas, too. 萩もまた芒また
MATUO BASYO          松尾芭蕉

の、芭蕉の句を読むのだが原句をなかなか思い出さない。
「a lovely name 」のことが「しおらしき」らしいことに気づいたがなかなか完全な句に到達しないうちに飛行機は機内食の昼食を済ませるや上海に着いてしまう。乗ってしまえば2時間半はあっという間であるが家を出てから既に半日がかりであることに違いはない。
俳句とは、情景は浮かんでもそれを一句に仕立て上げる難しさを持つ文芸である。冒頭の例のように言葉を並べて情景を認識できても日本人の心に刻み付ける力と調べを持つ作品になるためには、まさに「舌頭に千転」させなければならない。しかし、よく経験することであるが芭蕉の名句が直ぐ思い浮かばないのは実にじれったい。

(つづきは本誌をご覧ください。)