東京ふうが 25号(平成23年 春季号)

澤木欣一の沖縄諷詠 3

「澤木欣一の沖縄諷詠」

高木 良多

つぎの項の「盆」はつぎの三十一句より成る。

112 七夕はまた墓参の日草を刈る
113 青芒刈る音聞ゆ盆用意
114 盆市に一つ買ひたり蒲葵(くば)の笠
115 盆用意女で混める精米所
116 白米を一升母へ盆帰り
117 新米の白粥待つや里の母
118 掃苔やめだか掬へる女の童
119 盆道を作る芒を刈り倒し
120 草刈つて蟹の横ぎる盆の道
121 墓掃いて大蝸虫(ででむし)の殻集む
122 石敢当墓参の人の岐れ路
123 白雨(ゆふだち)は亀甲墓を洗ひ去る
124 魂迎へなぎさを素足にて歩み
125 月光に魚泳ぐ見ゆ盆の海
126 夕月夜乙女(みやらび)の歯の波寄する
127 金泥を海に渡せり盆の月
128 海に出て昼をあざむく盆の月
129 白き雲海に写れり満月で
130 夜も映る入道雲や名護の海
131 月の色さす魂棚の箒草
132 盆踊り汗水節といふ曲も
133 名護樫木曳くエイサーの木遣歌
134 エイサーの蛇皮線盲(めした)かき鳴らす
135 魂祭夜も暖かき海の水
136 月光のなぎさに出でて魂送る
137 香煙のなぎさ流るる魂送り
138 白き餅持たせて海へ魂送り
139 月の海ニルヤカナヤへ魂送り
注・ニルヤカナヤは海の彼方の楽土
140 供花(くげ)を波引いてゆくなり魂還る
141 夜の海に泡盛注ぎ魂送り
142 月光に波打際の火の香爐

(つづきは本誌をご覧ください。)