東京ふうが 25号(平成23年 春季号)

銃後から戦後へ 17

東京大空襲体験記「銃後から戦後へ」その17

目明き盲に物を聞き

鈴木大林子

事務掛登用試験なるものに首尾よく合格して数日経つと本区に呼び戻され、登用に備えて技工職のまゝ事務掛の見習をやることになりましたが、なにしろ生れてこのかたデスクワークというものは一度もやったことがなかったので初めのうちは戸惑いながら雑用程度の仕事をこなしていましたが、10日程過ぎたある日、出勤すると区長に呼ばれ「明日付けで新宿建築区事務掛を発令されたので、当区での勤務は今日で終り、辞令は先方の区長さんから受けるように。」とのこと。その日の終業点呼で区長から全員に紹介されると一斉に「おめでとう、これからも頑張れよ。」という声が上りましたが、私には「足手まといの厄介者が1人減ってよかった」というように聞えました。結局、横浜機械区には八王子派出所を含めて3年ばかり居たわけですが、別れ際はサッパリしたもので特に歓送会などというものもありませんでした。ただ、帰り際に区長から「君はもっと上を目指さなければいけない人間だから他の人のように遊ぶ時間はない。少しでも暇があれば勉強しなさい。それと他人の言葉によく耳を傾けるように。」と言われ、この最後の一言は私自身気付かなかった欠点をズバリと指摘されたもので、その後の長い人生の中で一番役に立ったと今でも思います。

(つづきは本誌をご覧ください。)