東京ふうが 27号(平成23年 秋季号)

曾良を尋ねて 10

甲州から江戸へ

乾 佐知子

前回、新宿区の神楽坂に近い噦筑地という土地の武家屋敷に曾良が奉公している器という諏訪の研究家矢崎源三氏の記録を元に当地を尋ねてみた。この界隈に江戸初期の侍屋敷の名残りのようなものが見つかりはしないかという、かすかな望みがあったからだ。
神楽坂界隈はひと昔前は高級料亭の多い街として広く知られ、今でも一歩路地を入るとそれらしい土壁の建物が所々に見られ当時を偲ぶことが出来る。
然し表通りのゆるやかな坂の両側には、モダンな飲食店や老舗の和菓子店等が賑やかに軒をつらね、洒落た商店街として人気が高い。
飯田橋方面とは反対側の坂を登り切った所が赤城神社だが、昨年大改装して大樹のあった境内はなく、社殿も檜の匂いが充ちていて全く従来の面影はない。
裏手は細い急勾配の下り坂となっていた。そろそろ行くとやがて平地となり、近くに江戸川橋の高架が見える。そこが筑地町であった。現在は大きな印刷会社やマンションが立ち並び比較的余裕のある敷地のように見えた。

(つづきは本誌をご覧ください。)