東京ふうが 28号(平成24年 冬季・新年号)

銃後から戦後へ 20

東京大空襲体験記「銃後から戦後へ」その20

大学は出たけれど

鈴木大林子

そうこうするうちに 4年の歳月が過ぎ、大学の方も何とか卒業に必要な單位も取れるメドが立つと、さてそれからどうするかということになりました。
当時国鉄の人事システムでは大学卒業者を二つのグループに分け、第一グループは戰前の高等文官試験(高文)の流れを汲む国家公務員上級試験に準じたキャリアを踏んで最終的には局長クラス以上の経営幹部を目指すコースでこれを本社採用と呼び本格的なエリートコース。それに対して第二グループは管理局の部長クラスを最終ポストとする準エリートで、当時の9箇所にあった支社で採用することから支社採用と呼んでいました。

 それでは私のように昼間は国鉄職員として働きながら大学の夜間部や通信教育などで大卒資格を得た者はどうなるのかというと、私が大学を卒業する前年までは大学卒業資格認定試験という制度があるにはあったのですが、これに合格したからといってその後の昇進昇格については何の保証もなく極言すれば「大学へ行ったのはお前さんの勝手で当方は関知しない。」という方針だったのを変更して、夜間部卒業者も新卒者と一緒に入社試験を受けさせ合格した者はそれぞれのコースすなわち本社採用合格者は本社採用の、支社採用合格者は支社採用のキャリアとして処遇する。受験できるのは一回限りだが不合格の場合でも受験時の身分はそのまゝというもの。

私の場合、卒業を機会に国鉄を退職して司法試験にチャレンジするという選択肢もあったが既に家庭を持っているという事情もあってそれは断念。あとは本社採用を受けるか支社採用を受けるかの判断となったので、懇意な先輩のルートで前年度の試験問題を手に入れそれを解いてみることにしました。

(つづきは本誌をご覧ください。)