東京ふうが 28号(平成24年 冬季・新年号)

ネパール・ヒマラヤ紀行 2011

ミニエッセー「旅と俳句」
ネパール・ヒマラヤ紀行 2011

ポカラ・ダンプストレッキング 仏陀の生誕地・ルンビニへ

石川 英子
4.ルンビニへ移動の日

3月 7日、快晴。
6時起床、一人で自分のカメラを持って、行った事がない方向に散歩に出かけた。夜明け前の田圃に真白に鷺の群が降りていたが、太陽が山の端に閃光を走らせると、50・60と竿になって東の空へ渡って行く、田植前の田圃から次々と翔んでゆく羽音を頭上に聞きつゝカメラを向けたが、映ったのは数羽だった。太陽が山の上に出てしまう頃は鳥の姿はなくなり、水路の雪解水が音を立てて流れ、女達は濯ぎ物を田の畦に広げて家に帰って行った。皆物を運ぶのは頭上に安定させて載せ両手は遊ばせている。日の出前から仕事を始め明るくなる頃は帰った。

 ホテルの周囲は田圃ばかりかと思っていたが、建材店、ガソリンスタンド、雑貨と駄菓子店等があったが縦横に走る農道の中に点々と豪邸が建っていた。水路にさそわれて迷いこみマンゴーの成っている家の前でカメラを向けていると中年のインド夫人が現われた。

インド夫人「お早うございます。」
「ここはマチャプチュレの眺めがとても良いですね。それに大きなマンゴーですこと。」
インド夫人「ありがとうございます。マンゴーも大きくなって沢山実を付けました。どうぞ中へお入り下さい、どうぞ、どうぞ。」
どちらも片言の英語で。
娘さんの名を呼ぶとにこやかに玄関に顔を出した。母親はインド式サリーだったが娘さんはスポーティなジャージイの上下で流暢な英語をなめらかに話した。

(つづきは本誌をご覧ください。)