東京ふうが32号(平成25年 冬季・新年号)

「旅と俳句」2012インド漫遊の旅

「旅と俳句」2012インド漫遊の旅 <2>

6. ダージリンの観光 3月3日(土)

石川 英子

おかげで正人の熱は6度2分に下がった。予定通りの観光を決行する。
ラウンジの朝食は3階の日本人で一ぱいだった。9時、心配顔で来てくれたペマさんが駅に立寄ってくれた。機関車の出発に備えて5人のスタッフが、釜を焚いたり、水を入れたり、大量の蒸気を出していたので、残念だが乘れなかったトイ・トレインの前で湯気を浴びて写真だけ撮った。

《絨毯工場》
ジグザグの山道を登りつめて標高の高い山上に拓けたチベット難民村についたのは10時だった。広い工房の入口に洗った羊毛を梳いて繊維を引き出して伸ばす係、窓辺で糸を紡ぐ係、これは日本古来の糸車ではなく自転車のリュームを前後の板に吊して足踏みの板をミシンの様に踏むと綿状の羊毛が糸になって巻き取られる仕組みになっている。一番年かさの老女が手招きして私を座らせた。糸紡ぎにかっこうな年頃と見たらしいが、右足で踏み込みながら羊毛のかたまりを引いてみても、逆転して糸がからまってしまった。
若い女性達は大物は数人がかりで、小物は1人で絨毯を織っていた。髪をきりりと結んで長い巻きスカートにセーターを着ている。チベット衣装と違って動き易い、織機もホータンの大工場で見た物とは違って自分達で工夫を重ねた手作りの木製品を何10年も使いこんで古くなり、角が取れていた。

(つづきは本誌をご覧ください。)