東京ふうが33号(平成25年 春季号)

澤木欣一の句集鑑賞

「俳話草紙」その3

高木 良多

月と太陽の俳風

澤木欣一と細見綾子は夫婦であり、生活様式は勿論共同体であり、「風」の運営に当っても互いに協力し合い、「風」の大会や鍛練大会では扶け合ってその事業を円満にすすめてきた。
然し、俳句の制作にあたってはお互いに指導したり、見せあったりするようなことはしなかった。

 その作品を見れば分かることであるが、同じ場所に行って吟行会を開いてもその作品にはおのづから相違するところがあった。
欣一俳句は即物具象の写生俳句よりはじめ、抒情というよりは認識という制作方向にすすみ、俳壇の最高峰に達したのであるが、綾子俳句は抒情俳句より歩を進め、心象俳句にいたり、俳壇の人気を博する方向にすすんでいた。

そのため両者には最後まで並列する状態のままであった。
どちらが良いということではなくいわば「月と太陽」というような俳風であったといえる状態ではなかったろうか。

(つづきは本誌をご覧ください。)