東京ふうが34号(平成25年 夏季号)

「旅と俳句」2012インド漫遊の旅

「旅と俳句」2012インド漫遊の旅 <4>

13. インド・ネパール国境スノウリ 3月9日(金)

石川 英子

7時起床、ラウンジでルンビニへ行く仏教巡礼の20人位の人達とバイキング朝食。
約束の8時を過ぎて運転手のスバシュ・ラジさんから電話があり、渋滞の為2時間遅れると言う、ラジェンダさんが急遽バナラシの運転手にゴーラクプル観光の案内を依頼したらしい。帰りが飛行機利用になったせいだ、仕方がないのでゴーラクプルの駅周辺迄散歩した。

昨夜は車屋と険悪な事態になっていて何も見えなかったが、町辻のチョータラには大きな菩提樹が繁り、根方の洞穴に祠られた巨大なリンガの御神体が眩しかった。その前には白衣に長髪の哲学者風の物乞いが瞑想をしていたり、歩道で煮炊きをする家族、体を洗っている男、サリーを翻してリンタクに乘って行く女性が目に入った。広いバスターミナルには巡礼や観光客が集まっていた。駅近くの円形ロータリーの中心には槍を持った凛々しい武将を乘せた軍馬の像が青空に聳えていたのを数枚カメラに収め、これが後に私達を助けてくれた。

駅の周辺には野良牛が寢まり、犬がうろつき、放たれたロバ達が7・8頭うろついていた。道の両端には竹の柱にボロ布や毛布を下げて、床を上げただけの路上生活者の住居が軒をつらねている。国家も行政も隅々迄はゆき届かないのだろう。なにしろ公然と川に死体が流されているお国柄である。

旅行者が多いせいか所どころに雑貨屋、野菜屋等が早々と店を広げている。昨日のホーリー祭の名残りの色水を飛ばす子供達、赤青黄緑等の色粉を屋台に並べて天秤ばかりで売る人等が居てまだまだ用心が必要だった。安い鞄やベルトや履物も並んでいるが、靴よりゴム草履等が多い。

面白いので9時半迄遊んでしまい急いでホテルに引き返す途中野良牛の群に会った。ホテル近くの大通りを10頭余りの赤牛が群で歩いていた。先頭の大型の牛が「モオ~」と鳴くと向い側から来たのら軍団も「モオ~」と応答し、又別の道からの群が「モオ~」と走って来た。実に珍らしい光景だと見とれていると、或る街辻に全員集まって三十頭余りの赤牛の群が最初に声を出した野良牛の後について、だっだっだっと狭い路地に入って行ったのであるが、さすが輪廻転生のお国柄、牛の社会を垣間見た2~3分間の出来事であった。

(つづきは本誌をご覧ください。)