東京ふうが 21号(平成22年 春季号)

季節の三句/春季詠

本誌「作品七句と自句自解」より

高木 良多
古井戸の井桁造りや百千鳥 (熊本城 三句)
城朧抹茶賜はる肥後言葉
衛兵の黒装束や寒戻り

蟇目 良雨
ぶらんこを漕ぐいちにいさんいちにいさん
実朝のいてふを倒す春嵐
国栖奏や天皇淵は蒼湛へ

荻原 芳堂
旋盤の青き切屑冴返る
魞挿すや水の明るき一ところ
春場所や浪速の空のとの曇り

鈴木大林子
サーカスの象立ち上る涅槃西風
朝市のテントの奥の春火鉢
一面の春野となりし兵舎跡

乾 佐知子
華乗りや木落し坂の風光る
御柱打振るおんべの荒あらし
牡丹の夜更けに白を極めたり

長沼 史子
囀や上五の太き芭蕉句碑
スッポンが首伸ばしゐる四月馬鹿
山吹や鑿跡深き修業窟

井上 芳子
春深し仲見世奥の急梯子
夏隣砥石くるくる江戸切子
春日傘街に漆器の椀選ぶ

積田 太郎
原宿に蝶舞ふごとし春の服
春愁の少年阿修羅眉険し
菊坂に馴染みの質屋啄木忌

石川 英子
啓蟄や五体投地の板手套 (チベット二句)
帰る雁氷河へ祀る祈祷旗
春暁の空に浮き来るエベレスト (ネパール)

(つづきは本誌をご覧ください。)