東京ふうが 21号(平成22年 春季号)

ニーハオ中国俳句の旅 7

シャングリラ:雲南の旅

「雲果てるところ 中国雲南省 麗江、中甸(ちゅうでん)への旅」
蟇目良雨

シャングリラ(中国語表記で香格里拉)。理想郷。
桃源郷と呼ぶ人もいる。
シャングリラを求めて人は果てしなく旅を続ける。不老不死の薬がこの世に無いことを知ってしまった私たちは、せめて安住の地である理想郷を探し求めてさまよい続ける巡礼者となるのみである。

その昔秦の時代に、徐福という人間が、始皇帝の命により不老不死の薬を探し求めて、秦の国からはるばる扶桑の国日本にたどり着いたのは今から二千年以上も前の話。その徐福伝説が今でも、熊野や丹後半島に残っているのは、夢を追いかける少し愚かしい者をいつの時代の人も暖かくもてなしてくれる証しなのではないだろうか。
シャングリラ・・・・・なんと響きのよい名前なのであろうか。シャングリラを求めて徐福同様に愚かしい旅人になった私たちは異国の人たちに暖かく迎えて貰えるのであろうか。

以下は2002年4月晩春から初夏にかけて雲南省を訪れた俳句紀行である。
この響きの良い言葉シャングリラは、James Hiltonの小説Lost Horizenの中の「理想郷」から来ているという。
かつて米空軍の暗号名に使われて秘密基地を意味することもあったくらい「理想郷」は見つけ難いと言うことでもある。
シャングリラのあるという雲南省は、その昔、日本に焼き畑農業や稲作、さらには、なれ鮓を伝えてくれた苗族( ミャオぞく)の故里。
何かで聞いたことがあるが、ここに至るために昔は、唐の都・長安から、まず天然の要害の「蜀の桟道」を通り、それからようやく、ここ雲南に入ることができたという、まさに命がけの辺境の地にあることは歴史が教えてくれるところである。
中国の首都長安からは、まさしく雲の南の果てにあるという遠い遠い国であった。

(つづきは本誌をご覧ください。)