東京ふうが 28号(平成24年 冬季・新年号)

冬季詠

季節の三句/冬季詠

本誌「作品七句と自句自解」より

高木 良多
書庫裏に冬の夕日の回りきし
鳩がのどを鳴らして歩く空也の忌
だいこ引き立ち上がるとき海見ゆる

蟇目 良雨
片時雨法然展に日の射して
石段をおりて水汲む一葉忌
水槽の四隅に魚や十二月

鈴木大林子
秩父なる宮司屋敷や冬木の芽
象の曳く鎖の音や初時雨
目貼して明日出稼ぎに行くといふ

乾 佐知子
初冬の星が光りをつよめけり
雪螢庚申塚にまつはれり
夜更けまで番屋の灯る十二月

井上 芳子
菩提樹の枝ぶり天に寒日和
古き文字和紙ごと洗ひ冬深し
額装の文字の佛語や雪晴るる

積田 太郎
障子貼る東大生の手内職
福は内掻く込む熊手買ひにけり
父母の手をブランコにして七五三

石川 英子
初日射す大佛殿の小窓より
燭揺れて阿修羅の淑気まさりけり
鑑真の御廟に舞へる牡丹雪

花里 洋子
お不動の香煙まとふ冬木の芽
声太が手締をしきる熊手市
荒風に日付の変はる酉の市

深川 智子
神鶏の声裏返る十二月
方位盤の指せるいづこも山眠る
冬雲の影飛んでゆく花時計

太田 幸子
煤籠パソコン抱え四畳半
モーツアルト流るる牛舎春近し
風花や真赤に焼けし硝子玉

堀越 純
風花や保線工夫の遅足なる
火事場跡金庫残りてゐたりけり
真夜の火事風がサイレン煽りをり

元石 一雄
屠蘇祝ふ母さかずきに一たらし
牡蠣鍋に少し酒足す漁師宿
熱燗の手酌になりし後訛る

(つづきは本誌をご覧ください。)