季刊俳誌東京ふうが 通巻42号 平成27年夏季号

東京ふうが42号(平成27年夏季号)

「遊ホーッ」「遊ホーッ」278より(2015・6)

洒落斎著

①福島第一原発の立地

福島第一原発については施設設計絡みの問題点をいままでに何回か記してきましたが、
諏訪かねのり兼位著の『地球科学の開拓者たち』に大変重要な記載があったので、少し長い文ですが紹介します。
埼玉大学の関陽太郎は、昭和39年(1964年)の秋に、この地方の地質調査を行った。当時、ここ福島県の浜通りの磐城―大熊・双葉周辺の海岸に沿って、高さ36mの急崖がつづいていた。当時この付近の海岸は、崖下から数mくらいしか波打ち際がなく、満潮で海が荒れる時には海水が崖に直接打ちつけていた。
海岸線から高さ25mのところに、直径1~2mの大きな穴が数カ所開いており、水平な富岡層に沿って、水平に並んでいることに、関は気づいた。
地元の漁師たちに、あの穴は何かと尋ねたところ、
「あの穴は海鵜の巣です。冬が訪れて寒くなるとオホーツクあたりからここに飛んできます。あの穴のなかで雛を育てて、春になるとまた北に帰るのです。あんな高いところに穴を掘っているのは、荒波や津波を避けているのでしょう。真冬の時化の時には、この崖に打ちつける荒波はとても激しいものです」といった答えがかえってきた。
関は昭和40年(1965年)3月にこの福島第一原発建設のための「福島調査所」を訪ね、幹部のT氏に会い、ボーリングコアの一部を研究用に所望したいと申し出て快諾された。その後で関はT氏と懇談した。
T氏:原子力発電所は海岸の地層(富岡層)を海水面からの高さ10mくらいまで、大きく削り取ったところに置く方針です。発電所の底部は海水面からの高さ7mくらいのレベルに置きます。原子炉のメーカーのGEも、この現地をみて、私たちの計画に賛成しています。


(つづきは本誌をご覧ください。)