季刊俳誌東京ふうが平成28年春号(通巻45号)表紙

東京ふうが45号(平成28年春季号)

第6回「遊ホーッ」「遊ホーッ」304より

奴隷制廃止の補償

洒落斎

『21世紀の資本』で日本でも有名なフランスのトマ・ピケティが、『新・資本論』をその後に著述している。その本にフランスとイギリスにおける奴隷制廃止の補償に関する記述があり、エーッと驚くべき内容なので紹介します。
旧ソ連に属していた国々と東欧諸国は、ほんの10年前に、一世紀前の出来事について財産の返還と補償を行なっている。一方、フランス領の比較的大きな島(インド洋のレユニオン島、カリブ海のグアドループ島、とマルティニーク島)で奴隷制が廃止されたのは、一世紀半前の1848年のことである。
現実には、奴隷制廃止後も合法的な搾取が長らく続いており、搾取が20世紀初めまで続いた例もある。
奴隷制の廃止は、多くの場合、巨額の金銭的補償を伴ったというのだ。― 但し、奴隷の所有者に対して。たとえばイギリスの極端なケースはこうだ。英領アンティル諸島、 モーリシャス島、ケープタウンで1833年に奴隷制が廃止されると、イギリス議会は誰からも反対されることなく、きわめて気前のよい損害賠償法を成立させた。
それによると総額2000万ポンド(当時のイギリスGDPの約5%に相当する。現在で言えば、約3000万ユーロ)を国庫から奴隷所有者3000人に払うというのだ。にわかに信じがたい出来事だ。


(つづきは本誌をご覧ください。)