東京ふうが55号(平成30年秋季号)

第16回「遊ホーッ」

洒落斎

①十三億分の一の男(2015・10月)

 標題の十三億分の一の男というのは、峯村健司著の『十三億分の一の男』に書かれていた習近平のことですが、その本に江沢民への対応で大変興味深い内容が書かれていましたので紹介します。
中国の最高指導者経験者が財産の隠し場所に選んだのは米国だった。超大国にカネを蓄えておけば、中国の捜査機関といえども簡単には手出しできない。
そこで習近平指導部はある秘策に出た。中国の捜査機関に勤めたことがある当局者が、2014年7月1日から施行された米国の新たな税法を指摘する。
「この秘法とは、米国が協定を結ぶ国と、相手国に住んでいる自国民の金融情報を交換するというものです。指導部の意向で4日前になって急遽、中国政府は米政府と協定を締結することになりました。このことによって、中国側は米国にいる中国人の口座や資産の情報をもらうことができます。年5万ドル(600万円)を越えるカネを米国に保有している人が対象です。狙いは、党や政府の幹部たちが米国に持っている全財産を把握することです。腐敗撲滅キャンペーンを進める指導部にとっては大きな武器となります」
この税法は、「外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)」と呼ばれ、外国の金融機関を使って税金逃れをしている米国の金持ちや企業の情報を集めるために作られた。
協定を結んだ米国は逆に、米国にいる自国民の金融情報を手に入れることができる仕組みになっている。習近平指導部はこれに眼をつけ、江沢民らの米国にある隠し資産を丸裸にして圧力をかけようとした。


(つづきは本誌をご覧ください。)