蟇目良雨講評
東京ふうが 平成28年夏季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報373回〜376回より選
喘ぎ咲く月下美人の只ならぬ 佐知子
草花の名前で感心するのは「ねこじやらし」「かやつリ草」「おしろい花」など実に奥行きのある草の本質に迫ったものがあるが、「月下美人」も加えていいだろう。夜になって人が寝静まるころ咲きだすこの美しい花はまさに月下の美人である。A Queen of the Nightは英名で夜の女王。咲きだすころ花の前に侍っているとこの句の通り喘ぎ喘ぎ香りを吐き出しながら咲き始める。「只ならぬ」は見た人の実感。