「乾佐知子」タグアーカイブ

浮城を緑雨すぎゆく曾良忌かな

蟇目良雨講評
東京ふうが 平成29年夏季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報387回〜389回より選

浮城を緑雨すぎゆく曾良忌かな  乾佐知子

曾良の忌日は宝永7年5月22日(1710年6月18日)頃とされている。曾良研究者の作者にとって曾良は故郷の偉人。浮城と言われる高島城の上をいま、緑雨が過ぎてゆく。曾良の里帰りのように感じた作者。


喘ぎ咲く月下美人の只ならぬ

蟇目良雨講評
東京ふうが 平成28年夏季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報373回〜376回より選

喘ぎ咲く月下美人の只ならぬ  佐知子

草花の名前で感心するのは「ねこじやらし」「かやつリ草」「おしろい花」など実に奥行きのある草の本質に迫ったものがあるが、「月下美人」も加えていいだろう。夜になって人が寝静まるころ咲きだすこの美しい花はまさに月下の美人である。A Queen of the Nightは英名で夜の女王。咲きだすころ花の前に侍っているとこの句の通り喘ぎ喘ぎ香りを吐き出しながら咲き始める。「只ならぬ」は見た人の実感。


大夏野割って来たりし牧草車

蟇目良雨講評
東京ふうが 平成27年夏季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報362回〜364回より選

大夏野割って来たりし牧草車 乾佐知子

大夏野の中を分けてはっきりとやってくるのは牧草車。牛馬の飼料にする夏草を刈ってそれを運んでくる。草はロールにされて保管される。揚句は大夏野を刈り取りながらロールに仕上げる高級な牧草車かも知れぬ。新しく刈った草の筋がはっきりと見えてくる。


春雷やもろみの眠る仕込蔵

高木良多講評
東京ふうが 平成23年 春季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報311号~312号より選

春雷やもろみの眠る仕込蔵 乾佐知子

 

「もろみの眠る仕込蔵」と春雷は関係がないようであるが遠い底の方でどこかつながっているように思える。ゴロゴロと鳴りながらもろみを育てている音のようにも思えるからである。このような季語の選び方には技術を必要とするところ。


第308回:熊・けんちん汁・冬帽子

お茶の水俳句会から秀句をご紹介します。
 
第308回 2010年12月13日(月) 於:文京区民センター
兼題:熊・けんちん汁・冬帽子、  席題:木菟・空っ風
 

けんちんや雲版を賞め席に就く   高木 良多

門前の花屋を覗く冬帽子      荻原 芳堂

牛売ってけんちん汁を囲みけり   乾 佐知子

 

第305回:胡麻の花・風の盆・秋意

お茶の水俳句会から秀句をご紹介します。
 
第305回 2010年9月13日(月) 於:文京区民センター
兼題:胡麻の花・風の盆・秋意、 席題:赤とんぼ・おしろいの花
 

おしろいが咲き裏町の灯り初む   高木 良多

てのひらを月に返して風の盆    蟇目 良雨

終バスの遠退く尾燈虫の闇     荻原 芳堂

虚無僧の尺八湿る秋意かな     鈴木大林子

吹き晴れし沼のほとりや赤蜻蛉   乾 佐知子

風の盆果て水音の戻りけり     花里 洋子

痛み止めゆるやかに効き秋意かな  井上 芳子

胡麻の花乾き切つたる大地かな   長沼 史子

茶柱のゆるがぬ今朝の秋意かな   石川 英子

帯決めて連を繰り出す風の盆    元石 一雄

東大寺まで奈良坂を油照      積田 太郎