蟇目良雨講評
東京ふうが 平成29年夏季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報387回〜389回より選
浮城を緑雨すぎゆく曾良忌かな 乾佐知子
曾良の忌日は宝永7年5月22日(1710年6月18日)頃とされている。曾良研究者の作者にとって曾良は故郷の偉人。浮城と言われる高島城の上をいま、緑雨が過ぎてゆく。曾良の里帰りのように感じた作者。
曾良の忌日は宝永7年5月22日(1710年6月18日)頃とされている。曾良研究者の作者にとって曾良は故郷の偉人。浮城と言われる高島城の上をいま、緑雨が過ぎてゆく。曾良の里帰りのように感じた作者。
草花の名前で感心するのは「ねこじやらし」「かやつリ草」「おしろい花」など実に奥行きのある草の本質に迫ったものがあるが、「月下美人」も加えていいだろう。夜になって人が寝静まるころ咲きだすこの美しい花はまさに月下の美人である。A Queen of the Nightは英名で夜の女王。咲きだすころ花の前に侍っているとこの句の通り喘ぎ喘ぎ香りを吐き出しながら咲き始める。「只ならぬ」は見た人の実感。
大夏野の中を分けてはっきりとやってくるのは牧草車。牛馬の飼料にする夏草を刈ってそれを運んでくる。草はロールにされて保管される。揚句は大夏野を刈り取りながらロールに仕上げる高級な牧草車かも知れぬ。新しく刈った草の筋がはっきりと見えてくる。
お母さんの着ていた大事な紬織りの着衣なのであろう。縁側に干してしばらくその思い出にひたっているという更衣の句。
「もろみの眠る仕込蔵」と春雷は関係がないようであるが遠い底の方でどこかつながっているように思える。ゴロゴロと鳴りながらもろみを育てている音のようにも思えるからである。このような季語の選び方には技術を必要とするところ。