東京ふうが80号(令和7年冬季・新年号)

 ◆「俳句四季」に三回に分けて連載した「Legend 私の源流 皆川盤水」が完結した。調べながらの執筆だったので時間がかかってしまった。ここには、これまで不明だった皆川盤水先生の「かびれ」時代を掘り下げて書いた。これを書いたことで、盤水先生のことはほぼ書き尽した感がある。興味のある方はお読みください。

◆3月3日に素十研究者の第一人者である蒲原ひろし先生が亡くなられた。101歳であった。蒲原先生は、新潟大学病院の整形外科医師として素十に俳句を学び、素十の業績を研究してきた。文献に基づく研究を進めてこられ、素十の一番弟子と言われた村松紅花先生とは別の切口が面白かった。新潟から素十研究家がいなくなって淋しいと思っていたところ、その新潟から新たな素十研究家が出た。中本真人氏である。

 俳人協会総会に参加したところ、俳人協会評論新人賞を受賞された中本真人氏とお話をする機会を得て、その評論集を戴いた。評論のタイトルは『新潟医科大学の俳人教授たち』で、勿論高野素十に触れているが、素十の親友中田みづほや虚子との関係にもページを割いている。中本氏は文學博士なので、理路整然と論を進めているので理解しやすい。新潟大学医学部内部の新資料により、当時が生き生きと描写されていて新鮮に映った。素十と立子のロマンスを前提に組み立てたなら、また別の切口が見えたのではないかと思った。私の素十論がまとまったら、議論してみたいと考えている。私が村松紅花先生にお会いして素十研究に入ったのも、俳人協会の総会の席上であったので奇縁を感じたのであった。

◆深川知子さん率いる「奈良あかね句会」の幾人かの方が「東京ふうが」に参加を希望しているので、今その準備をしている。仲間が増えて読み物が増えれば、都会の憂愁を詠う「東京ふうが」に相応しいものになるだろうと期待している。夏号あたりから編集を大幅に変えたいのでご了承願いたい。次回から原稿は蟇目良雨までお送り下さい。

◆私の句集『ここから』が文學の森俳句文学賞を受賞することになった。次回に特集を組みたい。

蟇目良雨

 

目次


名句逍遙 <59>  蟇目良雨
  皆川盤水秀句鑑賞  
  高木良多秀句鑑賞  

作品7句と自句自解 ちょっと立読み  

7

黄昏や又ひとり行雪の人 服部梅年

7 素十名句鑑賞・第18回 ちょっと立読み 蟇目良雨

11 高野素十年表・1 本郷民男

17 歳時記のご先祖様 (14) ちょっと立読み 本郷民男
  ─ 歳時のマニュアル化 ─  

22 コラム「はいかい漫遊漫歩」『春耕』より  ちょっと立読み 松谷富彦
 

216 白玉にとけのこりたる砂糖かな   高浜虚子
217 鯛焼のまづ尾の餡をたしかめし   能村登四郎

 

22 随筆・韓国俳話あれこれ 25  ちょっと立読み 本郷民男
  句集『朝鮮』の夏季より・夏の続き ほか  

25 私の愛唱句 (14) 本郷民男

27 あとがき

28 墨痕三滴 (俳句選評) 蟇目良雨

30 句会案内

表3 東京ふうが歳時記 <59> 編集部選
 
(つづきは本誌をご覧ください。)