「お茶の水俳句会」タグアーカイブ

令和5年秋季号 佳句短評

東京ふうが 令和5年秋季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報461回〜464回より選

上州のべえべえことば稲の花  古郡瑛子

面白い作品を作る人である。稲の花の咲く昼前に耳を澄ませていると農民たちが上州訛の「べえべえ」言葉で話し合っているのが聞えたのだ。赤城山の麓に育った作者には懐かしく聞こえて来たに違いない


すこしづつ我を失ふ花野道  弾塚直子

広々とした花野に立ったとき詩人の意識は段々薄れてゆき、今を忘れ過去を遡ったり、未来に飛んだりするのでは無いだろうか。花野には人生をリセットする力がありそうだ。


ポリバケツの田んぼに咲くや稲の花  伊藤一花

簡単に稲をポリバケツで育てると言っても様々な苦労があるのだろう。ようやく稲の花が開くところまで辿りついた努力も分かる。お米の収穫まで頑張って欲しい。


東京ふうが75号(令和5年秋季号)

 八十の坂を越えて分かることがある。これが老いて初めて知ることなのだろうか。そして無性に色々知りたくなる。死ぬまでに何でも知っておきたいという本能のようなものかも知れぬ。その原因を考えるに、俳句をやって来た延長線上にあることと関連していると思った。これ迄もいろいろ経験してきたが、俳句作りのように厳しく己を責めて来たとは思えない。多分70点、80点で事足りぬとして来たと今になって思うのである。体は動かなくなるが頭はまだまだ動いている。世の中のことを知り尽くしてから死にたいと思う。

 ネットで古い映画を見るが、「キューポラのある町」を見て驚いた。吉永小百合の可愛い少女映画だとばかり思っていたが、格差社会や北朝鮮帰還問題などを含む大いなる社会性映画であった。死ぬ前に知っておいてよかったと思う一例である。

蟇目良雨

 

目次


名句逍遙 <54>  蟇目良雨
  皆川盤水秀句鑑賞  
  高木良多秀句鑑賞  

作品7句と自句自解ちょっと立読み  

落柿舎ノ記   向井去来 本郷民男

素十名句鑑賞  (14)ちょっと立読み 蟇目良雨

13 歳時記のご先祖様 ⑨ちょっと立読み 本郷民男

17 随筆・韓国俳話あれこれ 20 ちょっと立読み 本郷民男
  金剛句歌詩集の内金剛・内金剛に向かう ほか  

21 私の愛唱句 9  

24 コラム 「はいかい漫遊漫歩」ちょっと立読み (『春耕』より) 松谷富彦
  192 冬凪ぎて砂に小貝の美しく  吉屋信子
193 蝉も哭き人も泣きけり今日真昼   信子
194 冷し酒写楽といふは屠龍なり 加藤郁乎
195 冷奴十年早い奴共  郁乎
196 地を這う視線で報道写真六十年
197 振り切るる線量計や草の花  柏原眠雨
 

30 関東大震災百年に寄せて
─ 何故、上野の山は燃えなかったのか ─

大多喜まさみ


32 俳諧と俳諧の源流小考  

39 墨痕三滴(俳句選評) 蟇目良雨

41 あとがき

42 句会案内

表3 東京ふうが歳時記 <54> 編集部選

(つづきは本誌をご覧ください。)

 

令和5年夏季号 佳句短評

東京ふうが 令和5年夏季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報459回〜462回より選

角合はす牛の眼力油照  乾佐知子

真夏の牛相撲大会の一こま。隠岐や山古志では八月に闘牛が行われるから、こんな光景が見られるはず。角を合わせて一歩も退かない牛の眼を見れば、戦う意思をこめた眼力そのもの。多くの旅の中から得られた一句。油照の季語の採用で眼が脂ぎっているように思える。

魚の尾のまな板を打つ走り梅雨  田中里香

活き魚を調理するとき魚の種類は限定されるだろう。鯛、ヒラメ、鯵や鯉なども該当する。まな板に置かれて捌かれる魚は尾鰭を激しく俎板に打ち付ける。水しぶきがあたりに飛んだ刹那に、作者は梅雨の到来を感じたのではなかろうか。

遠くまで行くんだ僕の好きな夏  伊藤一花

お孫さんの言葉をそのまま句にしたように思った。夏休みにどこに行くのと尋ねたら「好きな夏だから遠くまで行くんだ」と返事をしたのだろう。多分これが正解だと思うが、作者自身も活動的な方であるから、心の底では同じようなことを叫んでいると思った。


東京ふうが74号(令和5年夏季号)

編集人が語る「東京ふうが」74号 「俳句四季」から「東京ふうが」が30周年を迎えたので記事を書いてくれと依頼があった。そうか、もう30周年を迎えたのかと感無量である。

 私は昭和57年に高木良多先生に誘われて俳句を始めた。その2年後に良多先生と「お茶の水句会」を立ち上げ、野田晶子(しょうし)角田太一など東京新聞OBも加わり会が充実してきた。良多先生は盤水、欣一先生に追い付こうとよく文章を書いた。これは句会報には載せられない分量なので、受け皿として季刊で「東京ふうが」を刊行するに至ったのである。

 私は電子工学の出身なので若い頃はパソコンを使いこなしていたが、昭和47年に電機会社を辞めてからパソコンの世界は捨て、それから10年余り経て俳句の世界に入り句会報作成や句の記録に必要だと気づいてパソコンを再び使い直したのであった。  10年間のブランクは大きくワープロなら即座に文章が書けるのに、パソコンではワードを立ち上げてから文字入力をするまでに平仮名・片仮名入力とローマ字入力の切替えの仕組みが良く理解できずに時間の無駄を何度したか分からない。

 始めに買ったワープロの記憶媒体はカセット式の磁気テープで、それがフロッピーディスクに代り幾分か便利になり、ワ―プロにネット機能が付いて外部に電話線を使用してデータが送れるようになった時点でワープロは製造中止になってその時代を終えた。手書きの文章がワープロで整然として文字列で現われて自己満足していた。

 さて、パソコンを再開してから5年ごとに買い替えて来たので、何台の機械を使い捨てて来たか分からない。慣れてきた頃に機械に故障が生じたり、使用しているソフトが保証期限を過ぎてウィルスにかかる危険が出て来ると理由は様々だが、使用者としては不自由極まりない。更にインターネットに繫いで利便性を求めると、そこでもこまごまとして制約を受ける。「えーもー、止めちゃおう」と思う気持ちは事実あるのだが、俳句を始めて、それなりに責任が出て来ると「俳句のために全て我慢しろ」と自分に言い聞かせている。

 こんな悪戦苦闘の日々が、私を若々しく見せている根源なのだと今では思うのである。9月25日で81歳になる。
蟇目良雨

 

目次


名句逍遙 <52>  蟇目良雨
  皆川盤水秀句鑑賞  
  高木良多秀句鑑賞  

作品7句と自句自解ちょっと立読み  

その濱ゆふ   嵐雪・朝叟  

素十俳句鑑賞・100句  (13)ちょっと立読み 蟇目良雨

13 歳時記のご先祖様 ⑧ちょっと立読み 本郷民男

16 コラム 「はいかい漫遊漫歩」ちょっと立読み (『春耕』より) 松谷富彦
  186 歌舞伎役者と俳句(上)
187 歌舞伎役者の俳句(下)
188 原爆に果つ身なりしを吊忍   大久保橙青
189 宮沢賢治の俳句
190 イトーロジョーホコーハーモニカ…
191 敵性語って知ってますか?
 

22 私の愛唱句 8  

25 随筆・韓国俳話あれこれ 19 ちょっと立読み 本郷民男
  金剛句歌詩集・成田碩内などのこと ほか  

28 滑稽の源流小考 本郷民男
  武蔵の國・旧境村の三俳人(欣一・綾子・秋を)  

34 墨痕三滴(俳句選評) 蟇目良雨

37 あとがき

38 句会案内

表3 東京ふうが歳時記 <53> 編集部選

(つづきは本誌をご覧ください。)

 

令和5年春季号 佳句短評

東京ふうが 令和5年春季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報457回〜459回より選

大谷のミサイル打球風光る  小田絵津子

WBCの試合は、大谷翔平君がいたためか国民の多くが観戦した。投手と打者の二刀流ながら彼の打つ打球は速い。それをミサイル打球と表現してみんなが納得するほど実際に速いのである。大谷恐るべし‼

水瓶に盈ちゆく春の愁ひかな  河村綾子

水瓶(すいびょう)といって観音様が左手に下げているものは本来聖水が入っているが、この中に春の愁が満ちてゆくと見立てた感性が光っている。

佐保姫来る「さうだ床屋へ行かなくちやあ」  古郡瑛子

春の使者佐保姫が来るので髪を綺麗に整えて待ってあげようという句意。床屋だから男だろうが、婆さんになると床屋で髪を切ってもらい髭を剃って貰ったりすることもある。


東京ふうが73号(令和5年春季号)

編集人が語る「東京ふうが」72号 『東京ふうが』は季刊の俳誌で肩の凝らない内容になっている。それは、私自身文学の専門家でなく俳句愛好者という理由による。また、会員がどのような出自なのかも、根掘り葉掘り聞く興味を持たないので深く立ち入らないことにしている。
 乾佐知子さんが『春耕』に執筆していた「曾良を尋ねて」を『東京ふうが』に転載し始めたのは、『春耕』と『東京ふうが』は読者が少し違うことを知っていたので、多くの方に読ませるためであった。本郷民男さんのことは始めから文学博士であることを知っていたので、本郷さんのための紙面を提供しているが、これも見るべき人は見てくれている。
 私が心配しているのは、他の会員で、もしかしたら何かの専門家であることを知らずに過ごしていないかと言うことである。仮に専門家でなくとも、これまでの生き様は波乱に満ちたものであったかも知れない。
 俳句は記録文学だと思うし、個人の記録も大切な時代の証言になっている筈なので大いに紙面を利用してもらいたい。高々200部ほどの雑誌でも袋詰めや発送などに体力の限界を感じる時がある。今のうちに書いていただき、後世の方に何かを残してゆきたいと考えている。
蟇目良雨

 

目次

 


名句逍遙 <52>  蟇目良雨
  皆川盤水秀句鑑賞  
  高木良多秀句鑑賞  

作品7句と自句自解ちょっと立読み  

資料:資料:蛙合せ   かはづあはせ   仙化撰  

素十俳句鑑賞・100句  (12)ちょっと立読み 蟇目良雨

12 コラム 「はいかい漫遊漫歩」ちょっと立読み (『春耕』より) 松谷富彦
  180 季語「白魚」の落し穴
181 季語の「飛魚」が飛ぶわけ
182 戦争が廊下の奥に立つてゐた  渡邊白泉
183 街燈は夜霧にぬれるためにある  白泉
184 鶏たちにカンナは見えぬかもしれぬ  渡邊白泉
185 おらは此のしつぽのとれた蜥蜴づら  白泉
 

18 私の愛唱句 7  

21 随筆 「韓国俳話あれこれ」18 ちょっと立読み 本郷民男
  束の間の隆盛・昭和六年の『カリタゴ』九月号 ほか  

24 歳時記のご先祖様 ⑦ちょっと立読み 本郷民男

27 墨痕三滴(佳句短評) 蟇目良雨

30

芭蕉塚と芭蕉句碑小考

本郷民男
  武蔵の國・旧境村の三俳人(欣一・綾子・秋を)  

39 あとがき

40 句会案内

表3 東京ふうが歳時記 <52> 編集部選
 

 


 

(つづきは本誌をご覧ください。)

 

 

令和5年冬季・新年号 佳句短評

東京ふうが 令和5年冬季・新年号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報454回〜457回より選

交はりの二三捨つるも年用意  蟇目良雨

己を見詰め直すために必要なこと。断捨離の一部になるのか。

別珍の足袋つぐ夜半や一葉忌  乾佐知子

毛羽の立つ保温性の優れた足袋を一葉にも履かせたいと願う心がうれしい。

鮟鱇と同じ顔して下足番  高橋 栄

鮟鱇鍋屋の下足番はいつも下をむいているのかしら。失礼ながら観察眼は鋭い。


東京ふうが72号(令和5年冬季・新年号)

編集人が語る「東京ふうが」72号 「東京ふうが」は、私を俳句に導いて下さった高木良多先生のために毎月の句会報でなく季刊で発表する場を作って差し上げようと蟇目が企画したのであったが、外注製作するほどの余裕も無く、自分で両面カラー印刷して20部ほど作り始めた。当時私が持っていたリコーのジェルジェットインクの印刷機は、A5から両面印刷できる優れもので重宝した。欠点はインクのコストが高いのと時間がかかることだった。一日がかりで印刷し、リボンテープで背を化粧したり、本作りの楽しさを味わうことが出来たと思う。
 現在は菫花舎の亘さんのお手伝いによって実に簡単に冊子に仕上げて頂いている。松谷さんや本郷さんの健筆で誌面が充実していることは嬉しい。
 本郷さんの朝鮮半島時代の「カリタゴ」にある杉田久女が選句や選評を書いたという記事は、久女研究の上で貴重な記事ですのでよく読んで頂きたい。
 乾さんの「曾良を尋ねて」が終了し寂しくなったが、「曾良を尋ねて」は『曾良の正体』(草思社刊)に変身して日本中を飛び回っているのでご安心ください。
 今後も「東京ふうが」を利用して書きたいことがあったら書いていただきたいと思います。人生は一瞬であることを忘れずに楽しんでゆきましょう。
蟇目良雨

 

目次


名句逍遙 <51>  蟇目良雨
  皆川盤水秀句鑑賞  
  高木良多秀句鑑賞  

作品7句と自句自解ちょっと立読み  

悪い年は早く暮れよ  小林一茶  

素十俳句鑑賞・100句  (11)ちょっと立読み 蟇目良雨

10 コラム 「はいかい漫遊漫歩」ちょっと立読み (『春耕』より) 松谷富彦
  174 マグロは赤身が一番!?
175 マグロの立身出世
176 春寒やしり尾かれたる干鰈 村野四郎
177 俳人の愛する身も蓋もない醜名の〝名花〟
178 ある程の伊達し尽して紙子かな 斯波園女
179 俳句を取るか小説を取るか
 

16 私の愛唱句 6  

19 随筆 「韓国俳話あれこれ」17ちょっと立読み 本郷民男
  原三猿郎の後任・『カタリゴ』婦人雑詠 杉田久女選 ほか  

22 歳時記のご先祖様 ⑥ちょっと立読み 本郷民男

25 武蔵野散歩 本郷民男
  武蔵の國・旧境村の三俳人(欣一・綾子・秋を)  

28 【BOOKS】本のご紹介
  『曾良の正体』乾佐知子著/『曾良を尋ねて』に寄せて(読後感)  

31 あとがき

32 墨痕三滴(佳句短評) 蟇目良雨

34 句会案内

表3 東京ふうが歳時記 <51> 編集部選
 

(つづきは本誌をご覧ください。)

令和4年秋季号 佳句短評

東京ふうが 令和4年秋季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報450回〜453回より選

盆僧の茶髪にピアススケボーで  大多喜まさみ

 この句には驚いたので作者に聞いたら、こういう若い僧がいると言う。仏教界が人々に寄り添う時代になってお坊さんらしからぬ風体をすることも影響しているか。個人的には地獄を説くより好ましいと思っている。

ヨコハマのブルーライトや鰡の跳ぶ  高橋 栄

 当然「ブルーライトヨコハマ」が頭の隅にある。横浜港のブルーライトに照らされた夜の鯔に新味がある。

夕風やあをあを冷ます月見豆  弾塚直子

 月見豆(枝豆)を青々と冷ますところに俳句の味がある。一種の冒険だが成功していると思う。


東京ふうが71号(令和4年秋季号)

編集人が語る「東京ふうが」70号 乾佐知子さんの「東京ふうが」に連載した「曾良を尋ねて」が一冊にまとまった。十数年の努力の結晶である。今度の仕事で乾さんのねちっこさが分かった。何度も何度も校正する態度は研究者そのものだ。乾さんは学者ではないが、疑問点を資料を使って追い求めて行く態度は見事だ。かくして労作の「曾良を尋ねて」が完成した。正月休みにゆっくりと読んでもらいたい。徳川家康の六男・忠輝が絡んだ曾良であるというのが乾さんの論である。令和五年のNHK大河ドラマは「徳川家康」である。何か関係が分かるかもしれないので両方見て欲しい。三谷幸喜の「鎌倉殿の十三人」はどの人物像もはっきり描かれ実にためになったと感謝している。
深川知子さんの第二句集が角川書店から来春刊行される予定。これも楽しみだ。私も第五句集に挑戦中。頑張ります。
蟇目良雨

 


名句逍遙 <50>  蟇目良雨
皆川盤水秀句鑑賞
高木良多秀句鑑賞

作品7句と自句自解ちょっと立読み

日本の雁 自画自賛 一茶

素十俳句鑑賞・100句  (10)ちょっと立読み 蟇目良雨

10 私の愛唱句 5

13 随筆 「韓国俳話あれこれ」16ちょっと立読み 本郷民男
木浦の女性俳壇・『カリタゴ』第二号の23,24頁 ほか

16 墨痕三滴(佳句短評) 蟇目良雨

18 コラム 「はいかい漫遊漫歩」ちょっと立読み
(『春耕』より)
松谷富彦
168 散る花を追掛て行く嵐かな 権中納言 藤原定家
169 俳聖が愛した若き弟子・杜国
170 虚子は愛弟子をどう評価していたか(上)
171 虚子は愛弟子をどう評価していたか(下)
172 鬼平が愛した軍鶏鍋屋「五鉄」
173 消えゆく古季語、生活季語を守る努力

24 俳人・春耕と一茶 本郷民男

28 歳時記のご先祖様 ⑤ちょっと立読み 本郷民男

31 あとがき

32 句会案内

表3 東京ふうが歳時記 <50> 編集部選

(つづきは本誌をご覧ください。)