東京ふうが75号(令和5年秋季号)

 八十の坂を越えて分かることがある。これが老いて初めて知ることなのだろうか。そして無性に色々知りたくなる。死ぬまでに何でも知っておきたいという本能のようなものかも知れぬ。その原因を考えるに、俳句をやって来た延長線上にあることと関連していると思った。これ迄もいろいろ経験してきたが、俳句作りのように厳しく己を責めて来たとは思えない。多分70点、80点で事足りぬとして来たと今になって思うのである。体は動かなくなるが頭はまだまだ動いている。世の中のことを知り尽くしてから死にたいと思う。

 ネットで古い映画を見るが、「キューポラのある町」を見て驚いた。吉永小百合の可愛い少女映画だとばかり思っていたが、格差社会や北朝鮮帰還問題などを含む大いなる社会性映画であった。死ぬ前に知っておいてよかったと思う一例である。

蟇目良雨

 

目次


名句逍遙 <54> 蟇目良雨
 皆川盤水秀句鑑賞 
 高木良多秀句鑑賞 

作品7句と自句自解ちょっと立読み 

落柿舎ノ記   向井去来本郷民男

素十名句鑑賞  (14)ちょっと立読み蟇目良雨

13歳時記のご先祖様 ⑨ちょっと立読み本郷民男

17随筆・韓国俳話あれこれ 20 ちょっと立読み本郷民男
 金剛句歌詩集の内金剛・内金剛に向かう ほか 

21私の愛唱句 9 

24コラム 「はいかい漫遊漫歩」ちょっと立読み (『春耕』より)松谷富彦
 192 冬凪ぎて砂に小貝の美しく  吉屋信子
193 蝉も哭き人も泣きけり今日真昼   信子
194 冷し酒写楽といふは屠龍なり 加藤郁乎
195 冷奴十年早い奴共  郁乎
196 地を這う視線で報道写真六十年
197 振り切るる線量計や草の花  柏原眠雨
 

30関東大震災百年に寄せて
─ 何故、上野の山は燃えなかったのか ─

大多喜まさみ


32俳諧と俳諧の源流小考 

39墨痕三滴(俳句選評)蟇目良雨

41あとがき

42句会案内

表3東京ふうが歳時記 <54>編集部選

(つづきは本誌をご覧ください。)