東京ふうが81号(令和7年春季号)

◆よく「春耕」と「東京ふうが」の両方を発行して大変でしょうと言われるが、私は負担に思ったことはない。それは役割がはっきりしているからだ。

 ○「春耕」は皆川盤水先生が創刊された月刊俳句誌で、求めるところは「有季定型の俳句と和楽の心で、自然と人間の中に新しい美を探求します」というスローガンに沿って写生俳句を追及している。傾向としては自然描写が9割で、残り1割が人生諷詠である。伝統ある結社としての矜持が求められるので、作り方はオーソドックスであると思う。会員も現在は青森から沖縄までいるので、土地の事情を知らないと選句に苦しむことになる。
 私の両親は岩手県出身なので北の方は色々くわしい積りだが、沖縄はまだ行ったことの無い土地なので勉強しながら俳句作品に接している。実際に旅をして土地に触れあえば理解が早いのだがと思いつつ、沖縄への訪問は叶わなかった。多分これからも行くことは出来ないだろう。

 ○「東京ふうが」は、今から50数年前に高木良多先生がはじめられた「お茶の水句会」が母体になって発刊された季刊誌である。高木良多先生に句碑を建てる代わりに発行してあげた雑誌である。会員の分だけB5のカラー印刷で手作りし冊子に仕上げたので、発行の際は数日間事務所にこもり、印刷から製本まで一人でこなしたものだ。その頃使っていたプリンターがリコーのジェルジェット印刷機。これはカラーでA5の両面印刷ができる優れものだった。その後、多くの人に見てもらおうと部数を増やすことになり専門の印刷屋さんと専門の編集者・菫花舎さんにお願いしている。

 ○「東京ふうが」は「都会の郷愁を詠う」ことをモットーにしているので、人事句が多いと思う。自分の心に溜まったものを吐きだすために利用していただきたい。なお、ホームページも毎号更新しているのでご覧いただきたい。ホームページの作成は田崎晶さんにお願いしている。 自然詠だけでなく生活の中に一コマが描ければ、「東京ふうが」の目的に適うと思う。私も俳画の絵心を忘れないように毎号書かせてもらっている。

 ○81号から大阪の関野みち子さんの小説を掲載しました。大阪人の哀歓の描写にすぐれた関野さんの世界をこれからも工夫しながらお届けします。ご期待下さい。他の皆さんも隠れた才能をお持ちだと思うが、ぜひ「東京ふうが」を使って楽しんでいただきたい。

蟇目良雨

目次


ショートショート 001 沈丁花 関野 みち子
 「沈丁はお喋りみんな口開けて   蟇目良雨」 

作品7句と自句自解 ちょっと立読み 

9素十名句鑑賞・第19回 ちょっと立読み蟇目良雨

12高野素十年表・2本郷民男

20コラム「はいかい漫遊漫歩」『春耕』より  ちょっと立読み松谷富彦
 218 梅沢富美男の初句集『一人十色』(上)
 219 梅沢富美男の初句集『一人十色』(下)
 

22小説 001 「春子と春子」 ちょっと立読み関野みち子

25随筆・韓国俳話あれこれ 26  ちょっと立読み本郷民男
 正岡子規の遠縁の歌原蒼苔・蒼苔の学業 ほか 

28私の愛唱句 (15)本郷民男

31墨痕三滴 (俳句選評)蟇目良雨

33あとがき

34句会案内

表3東京ふうが歳時記 <60>編集部選
 
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