「通巻50号」タグアーカイブ

たまきはるいのちひと日や花さぼてん

蟇目良雨講評
東京ふうが 平成29年夏季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報387回〜389回より選

たまきはるいのちひと日や花さぼてん  松谷富彦

咲き誇る花の命が一日のみの仙人掌の花であることよという句意。月下美人に代表される仙人掌の花の儚さを詠った。


行基葺までは届かず夏の蝶

蟇目良雨講評
東京ふうが 平成29年夏季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報387回〜389回より選

行基葺までは届かず夏の蝶  深川知子

夏蝶の行方を眺めていたら行基の葺いた瓦屋根までは届かずに飛び去って行ったと言っている。ここで行基葺とは行基が指導して葺かせた屋根瓦のこと。元興寺のそれが有名。夏蝶の高くは飛ばないことを具象化した。


浮城を緑雨すぎゆく曾良忌かな

蟇目良雨講評
東京ふうが 平成29年夏季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報387回〜389回より選

浮城を緑雨すぎゆく曾良忌かな  乾佐知子

曾良の忌日は宝永7年5月22日(1710年6月18日)頃とされている。曾良研究者の作者にとって曾良は故郷の偉人。浮城と言われる高島城の上をいま、緑雨が過ぎてゆく。曾良の里帰りのように感じた作者。