平成31年冬季佳句短評

東京ふうが 平成31年冬季・新年号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報404回〜409回より選

五郎助の啼く夜や母の針仕事  佐知子

母が針仕事に精を出している静かな夜に外では梟が鳴く音がする。郊外に出れば梟を聞く機会は幾らでもあった時代のことか。便利さが自然の豊かさを奪っていることなどをふと思う。

喪ごころに選ぶポインセチア真白  知子

ポインセチアは猩々木とも言い、真っ赤な猩々色が特徴だ。仕来り通りクリスマスが近づくのでポインセチアを買うのだが、近しい人を喪った後なので白色のポインセチアを選んだという。めりはりの利いた作品。

A列車に乗りジャズマンの冬を逝く  若子

ジャズの名曲【A列車で行こう】にまつわる一句である。知人のジャズマンが亡くなったこの冬を偲んで作った一句。好きだった【A列車で行こう】の曲に送られて天国へ行ったことだろう。ジャズは若き情熱を滾らせてくれる。

義士会も驚く高輪ゲートウェイ  まさみ

義士会で泉岳寺を訪れたのだが今泉岳寺の近くにJRの新駅「高輪ゲートウェイ駅」が建設中。かつての赤穂浪士も道を間違いそうな面白さがある。