令和元年秋季佳句短評

東京ふうが 令和元年秋季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報414回〜415回より選

踏まれたる邪鬼の声聞く白露かな  深川知子

 四天王像の足下に踏まれている邪鬼像が声を発しているかと思ったらそれは白露のせいなのだろうかと思う作者。空気が凛と張りつめてきて露を結ぶような気候。仏像の発する声を聞くよい機会である。

銀漢や大草原のひづめ跡  堀越

 銀漢の下の大草原の光景。草原は大きくうねっているばかりだが、銀漢の明るさに大地に刻まれた蹄の跡がはっきり見えるのである。

    (友曰く)
これ俺の天空の村初時雨  島村若子

 これが俺の古里の天空にある村だぞと、友人が自慢している図。初時雨も来て、虹も見えるようである。乱暴なような言葉の配置が句に若々しさを齎した。