令和2年秋季 佳句短評

東京ふうが 令和2年秋季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報426回〜429回より選

追憶
妻となる人と別れて火恋し  蟇目良雨

遥か昔のことであるが結婚を約束した今の妻と密会した後の気持ち。妻は現在、風前の灯の命であるが、居るだけで安心する。甘いと言われようがどんどん妻恋の俳句を作るつもりだ。

浴衣着てアラン・ドロンに会ひに行こ  乾佐知子

若々しい作品。浴衣を着て花火を見に行くのかと思ったら、アラン・ドロンに会いに行くと言う。昔の一こまか、或いは映画にでも行ったのかな?

トランプもバカ殿もある案山子かな  大多喜まさみ

2020年を象徴する人物のトランプとバカ殿がいる。今年の漢字に「密」が選ばれたが、人物では作者の言っている米国大統領ドナルド・トランプとコロナで無くなったバカ殿の志村けんの二人だろう。的確な指摘だ。