令和3年春季 佳句短評

東京ふうが 令和3年春季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報432回〜434回より選

鳥帰る沼は太古の色湛へ  深川知子

水鳥が太古のころから日本に渡ってくる事実に感動したのだろう。力強い一句になった。

青春の彷徨に似て蜷の道  松谷富彦

蜷の道は水底に当てどなく描かれている。その形が作者の青春の彷徨に似ているとしみじみ感じ入っている。

雛僧の箒にからむ春の蝶  小田絵津子

雛僧は小僧のことで「すうそう」「こぞう」「ひなそう」などと読む。小僧が結界を掃除中に箒にからむ春の蝶。のどかな心なごむ光景だ。