東京ふうが 令和3年夏季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報435回〜437回より選
湯加減を聞く母の声栗の花 乾佐知子
浴室の外にある風呂の焚口から母が湯加減を訊ねている。換気窓を開けて返事をする作者。ふと目をやると栗の花が見える。懐かしい世界。
機嫌よきややの涎や草田男忌 河村綾子
作品に固有名詞として人物が出ている場合、その人物を匂わせてくれる関係性が必要。中村草田男の無心さはまさに赤子のようであるから、嬰児が機嫌よく涎を流している景色は草田男忌に相応しいと思う。
夏の夜やコルトレーンとバーボンと 野村雅子
ジャズを聴きバーボンを楽しむ夏の夜の解放感に溢れる一句。作者の心の若さが作り上げたもの。いつまでも続けて欲しい心の若さ。