東京ふうが61号(令和2年春季号)

寄り道高野素十論 31

蟇目良雨

終わりに

平成19年(2007)4月から13年に亘って高野素十を研究してきた。きっかけは素十の一番の高弟村松紅花先生のお話からであった。それは、素十の出生にかかわる秘密、並びに素十と立子のロマンスに関するものだった。
こんないきさつから調べはじめたのですよと言うと多くの人は、そんな話を弟子が師の恥のようなことを他人に話すかしらという懐疑論と、まだ関係者が存命だから公に出来ないねという意見ばかりであった。
世間の人、特に俳壇史を研究している人は、既に固定観念に陥り、例えば秋櫻子と素十の俳句論争と言われる「自然の真と文芸上の真」の論争があり、その結果素十と秋櫻子は生涯不倶戴天の敵になった。秋櫻子はホトトギスを離脱し新興俳句に花を咲かせたという論点から一歩も出ていないのが実情である。
現在、大陸移動説を信じない人はいないだろう。大陸がプレートに乗って移動し、周辺部は別のプレートの下に潜り込むために地震が発生することを今では小学生まで理解している。大陸移動説を唱えた当時の提唱者のヴェーゲナーはしばしば専門外の学者という攻撃をされた。地球物理学者でもない(実際は気象学者であった)彼がそんな突飛なことを言っても誰も信じなかったのである。
ヴェーゲナーは世界地図を見ていて南アメリカ大陸の東側とアフリカ大陸の西側の海岸線がよく似ていて大西洋を無視してしまえばぴったり一致することから、大陸が離れて(移動して)現在の形になったのではないかと想像、両大陸の接しているところの地質を調べて同一であることを証明して大陸移動説の正しさを世に認めさせたのであった。いわば素人的観点から本質を見出したのである。
大陸移動説が出たためにそれがプレートテクトニクスに発展し、今では地震のメカニズムが解明され地震に備える科学が発達してきた。そこで私たちは、火山国・地震国の上に住んでいても、宿命であることは肯いつつも日本はいい国だとして死ぬまで住み続けているのである。
世の中の常識というものは作られたものが多い。また、歴史は勝者の記録であることは歴史が教えてくれている。
2020年6月末のNHKのTV番組に戦国時代に日本で活躍(暗躍?)したキリシタン宣教師の実情が描かれていて驚愕した。
宣教師たちは日本国民をキリスト教に改宗させるために来ていること。戦国大名の強いところを軍事、金銭で応援し日本統一と同時にキリスト教国にしようという野望のために命懸けで活動したことが彼らの母国やバティカンの記録に淡々と残っていることを明らかにしてくれた。
例えば…

(つづきは本誌をご覧ください。)