秋季詠
季節の三句/秋季詠
本誌「作品七句と自句自解」より
高木 良多
義経の落ち行きし海流れ星
片脚は鉄塔掛けや秋の虹
人中に鳩も下り立つ白露かな
蟇目 良雨
底紅や明日には明日の幸ありと
山晴忌ぼるがは夕の火を熾す
人の世やのらりくらりと捨団扇
鈴木大林子
啄木鳥の谺す森の水車小屋
台風や赤き尾灯の広報車
銭湯のまたひとつ消ゆ文化の日
井上 芳子
出船を待つ賑ひや秋麗
水澄むやハーモニカ吹く船付場
車窓まえスカイツリーや秋高し
乾 佐知子
葛の葉の茂り川幅狭めけり
牛小屋を雨が叩くよ稲の花
女はしげにかなかなが鳴き昏れにけり
積田 太郎
爽やかに裳裾を飜(かへ)す伎芸天
冷やかに郡上の旅や宗祇水
萩刈りて門前寂びし白亳寺
石川 英子
朝霧や墨絵のごとき蒙古馬 (内蒙古シラムレン高原)
去ぬ燕馬乳酒を売る包の村 ( 〃 )
牛の角拾ふ草原秋の蝶 ( 〃 )
太田 幸子
北へ向く月の湾たつ連絡船
子の髪を編む母の手や秋涼し
潟消ゆる浜に残りし新松子
深川 智子
竹に盛る薬味も嵯峨野新豆腐
燈下親し独りといふに少し馴れ
ラヂオから太宰の斜陽小望月
花里 洋子
尿前の関に風音葛の花
待つほどに白の極致へ月下美人
爽やかに山の風来る野草展
元石 一雄
夏帽を突き挙げ十二の歳迎ふ
笛の音に掛声合わせ富士登山
赤富士の稜線浸る駿河湾
堀越 純
北辰をまつる山内昼ちちろ
見上げたる磴高々と昼の虫
黙深き洗心亭や菊日和
(つづきは本誌をご覧ください。)