春季詠
春季詠
本誌「作品七句と自句自解」より
高木 良多
児を抱き男が走る汐干狩
石屋より石穿つ音涅槃西風
益子観光いちご団地 小綬鶏の斜交ひにとぶ下毛野(しもつけの)
蟇目 良雨
女身仏に似てゐる独活のくびれやう
余生とは壺の蕗味噌ほどの嵩
黄砂降るなかにPM2・5
鈴木大林子
雪空に飴売の声よく透る
風ばかり乗せて二月の観覧車
赤シヤツは父の目印汐干狩
乾 佐知子
灯の消へて雛は小さき会話もつ
桃活けて畳に蕾こぼしけり
雪解風少年の墓一列に
井上 芳子
ガード下浅草海苔を山積みに
下萌やインドのビザをとる話
春分の日に賜はりし著作かな
石川 英子
千年の砂丘寺院や緑立つ チェンナイ
四迷忌や航路に南十字星 〃
ゴアは海のシルクロードよ春の星 ゴア
深川 知子
海峡に交はす船笛余寒なほ
二ン月の空美しや比良比叡
留守がちな御陵の衛士所鳥帰る
花里 洋子
比良八荒寄り合ふ鳥が波かぶる
雪解川ひろがりてきし車窓かな
黒姫の影青きかな花りんご
元石 一雄
吉水や琵琶の音聞ゆ桜狩
花会式見物客も踊り出す
村童の植えしと伝へ老桜
堀越 純
花屑を踏み墨堤の風に会ふ
川風にひろぐふところ飛花落花
花万朶勝海舟の指す未来
(つづきは本誌をご覧ください。)