東京ふうが61号(令和2年春季号)

新型コロナウイルスに思うこと 2

蟇目良雨

スペイン風邪のときの与謝野晶子の言葉など

偶 感

 2020年5月15日現在、新型コロナウイルスの日本における状況は収束の方向に向かい、政府も緊急事態宣言解除を地域限定で行うところまできた。東京など首都圏は、5月25日の専門家会議の決定により26日午前零時をもって解除された。
しかし、再燃(第二波)を嫌い緊急事態宣言を出し続けることを要望する県も出ている。実際東京では、解除後に歌舞伎町を代表として夜間の三密状態により感染者が増えてしまった事実がある。どこまで、どのように新型コロナウイルスとお付き合いしなければいけないのかと考えると言葉はきついが「戦時下」と認識せざるを得ない。
そんなとき、2020年5月12日に放映されたNHK―BS1スペシャル「人類vsウイルス 一〇〇年前のスペイン風邪」が大変示唆に富むもので、その内容を辿りながらスペイン風邪に関しておさらいをしてみた。
日進月歩の医学の研究を目の当たりにしている私達だが、100年前に突然襲ってきたインフルエンザに対しどんな対応をしたかは容易に想像つく。神頼み仏頼みであったことだろう。実際、ワクチンや治療薬など皆無であり、与えられた薬は熱さましのアスピリンだけであった。あとは患者の自然治癒を待つしかなかったのである。
2020年5月現在、新型コロナウイルスに対応できると思われる治療薬としてオルベスコ(喘息薬)、アビガン(インフルエンザ治療薬。フジフィルム子会社製造。中国政府承認)、カレトラ(HⅠV対症薬)、レムデシベル(エボラ出血熱対症薬)その他にイベルメクチン(寄生虫治療薬)などが存在し、重症患者に投与してそれなりの効果を上げていると報道されているが、これだと断言できる特効薬はないようだ。イベルメクチンは一回の投与後48時間でウイルス99%減少(豪研究)との報告もある。「イベルメクチン」は2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞した北里大学の大村智特別栄誉教授が発見した新種の菌から開発されたもので、「ストロメクトール」の商品名で承認されている市販薬である。一縷の望みにはなるとおもう。
また、ワクチン開発も急ピッチで行われ、こちらは世界規模の連携で開発されているので近い時期に実用化が期待される。すなわち、現在では、私達は絶望の淵に立たされているわけでなく、流行を遅らせ、早く下火に持ってゆくことで感染爆発を防げるところまで来ている。あとは市民一人ひとりの行動が良い結果を生むかどうかの分かれ道になっている。
武漢発の新型コロナウイルスの封じ込めに成功したとされる中国でも、5月の大型連休前に都市封鎖を解いた直後に再発の兆しがあり、慌てて再封鎖を行っている。韓国も同様で、国際的にみても素早く解決した韓国でありながら国民の気の弛みにクラブでクラスター感染が発生してしまったのだ。
しかし中国らしいと思うのは、再発感染者が出た武漢市民1千万人の内、子供を除く9百万人全員のPCR検査を行ったという実行力である。10人まとめて検査をして、もしその中に陽性者がいたら10人全員の検査を改めて行うという手法を編みだしたのである。これなら9百万人全員の検査が出来る。日本でもこれからはPCR検査が広がって行くことだろう。
私たちは、つまり、終息でなく、収束または共生しながら新型コロナウイルスの流行を抑えるしか方法がないことに気付き、多くの国民がそのことへの覚悟が出来たと思う。それは百年前のスペイン風邪の流行の推移と全く同じように第一波、油断して第二波、そして忘れたころに第三波が襲ってきて、後になればなるほどウイルスは強力に変異して致死率を上げて行くことを学んだからであった。


(つづきは本誌をご覧ください。)