東京ふうが23号(平成22年秋季号)

東京ふうが 23号(平成22年 秋季号)

秋季詠

季節の三句/秋季詠

本誌「作品七句と自句自解」より

高木 良多
八月や葉をあをあをと孔雀羊歯
鷺草や一輪挿しを翔つ構へ
青竹の節の白さよ処暑を過ぎ

蟇目 良雨
院展を出て湯疲れのやうにあり
ざざ虫と地酒持ち込む月の客
秋風の中へ妻の背押してやる

荻原 芳堂
首洗ひ池に尾を打つ赤蜻蛉
禅寺の知足の額や法師蝉
例幣使街道よぎる穴まどひ

鈴木大林子
似顔絵を売るアラブ人晩夏光
奉納の西瓜切り分く巫女溜
虚無僧の尺八湿る秋意かな

井上 芳子
鰯雲千変万化利根を越ゆ
菊膾水よき山の蕎麦処
蔵出しの茶器無雑作に秋海棠

長沼 史子
山里や瀬音かすかに葛茂る
鉢植えに隠るる猫や秋の暮
窓放ち金木犀やショパン聴く

乾 佐知子
禅寺の一木一草月祀る
吹き晴れし沼のほとりや赤蜻蛉
軒低き飛騨の山里雁渡る

積田 太郎
子規庵の糸瓜の水とる獺祭忌
一合の酒にて終る胡瓜もみ
芦の湖に霽れて富士立つ秋意かな

石川 英子
訃の報に秋気深まる弥陀ヶ池
秋めくや赤門通りの画材店
石仏に秋蝶憩ふ鎧坂

花里 洋子
旅立ちの子規のふるさと青みかん
漂白の笠に穴あく草紅葉
聞きとれぬほどの御詠歌秋深し

元石 一雄
神棚の上に柘榴が口開く
百匁柿熟るるに日数重ねけり
鬼灯の鳴る子鳴らぬ子競ひ合ふ

(つづきは本誌をご覧ください。)