澤木欣一の沖縄諷詠 4
「澤木欣一の沖縄諷詠」
高木 良多
つぎの項の「芭蕉布(ふ)の里」は副題に「喜如嘉(きじょか)」とあり、つぎの29句より成っている。
235 福木の葉みどりの小判うち重ね
236 白き花福木瑞葉の芯にして
237 花咲ける福木の幹は牛の胴
238 大福木神さびにけり苔の紋
239 仏桑華浦の堅庭籾を干す
240 炎天に白帆拡げて籾干せる
241 箕を高く捧げて籾を風まかせ
242 豊年を甘世(あまよ)と呼べり島人は
243 旗幟倒すがごとく芭蕉伐る
244 翻へる芭蕉の根元山刀(なた)伐りに
245 伐り倒し水ほどばしる芭蕉かな
246 豊かなる芭蕉の水の土に沁み
247 伐り倒し芭蕉丸太のごと運ぶ
248 芭蕉剥ぐ象牙の肌の痛々し
249 剥ぎ剥ぎて芭蕉の芯の真珠色
250 皮剥いで白珠の艶(つや)糸芭蕉
251 いさぎよく芭蕉の肌を裂きにけり
252 芭蕉剥いでしとどに濡るる女の手
253 木灰(あく)汁で煮つめし芭蕉糸の銀
254 桛(かせ)に糸走り巻くなり緑蔭に
255 福木より福木へ干して芭蕉糸
256 糸巻に芭蕉綾糸晩夏光
257 芭蕉糸しろがね光り糸車
258 緊張の芭蕉糸より琴の音
259 旱り星芭蕉銀糸は折れ易し
260 黒南風(はへ)に最高の織り芭蕉布(ぬの)
261 米と甘藷(いも)交ぜて醸(かも)せり衣(きぬ)の糊
262 泡盛を呑んでつぶやく甕の藍
263 月代や芭蕉林に砧打つ
(つづきは本誌をご覧ください。)