東京ふうが23号(平成22年秋季号)

東京ふうが 23号(平成22年 秋季号)

ニーハオ中国俳句の旅 9

「大連・旅順」

蟇目 良雨

 来てみて初めて解ることがある。その一つに大連が坂の多い街であることだ。港から後背地へ少しづつ坂がかりになって行く。「七七路」あたりにある旧日本人居留街は戦前の面影を残しているといわれるが、これはロシアの広々した街づくりの上にある日本的家屋ということで決して日本の温かさを感じさせる街並みではないようだ。山の等高線に街(JIE)と呼ばれる小道がありここに家が並んでいる。聞くところによると中国東北地方の玄関口にあたり冬の寒さはなかなかのものらしい。また、大陸特有の強風が吹き、冬は耐えるという一語の毎日だそうである。

 私たちは「ハルピン街」の静かな路地を歩いてみた。煙突を備えた石造りの家には蔦が絡まり、鉄柵を廻らせた庭にさまざまな草花を咲かせている。柵は薔薇を絡ませ、糸瓜の実がだらりと下がっている。朝顔はどれも小ぶりである。サルビアの紅色が眩しい。柿の実が実る家もある。子供をあやす老女が数組路地に屯している。母親は働きに出ているのであろう。

(つづきは本誌をご覧ください。)