チベットの風になって 3
ミニエッセー「旅と俳句」
「チベットの風になって」(連載4回)—– 平成22年 3月のチベット
石川 英子
3月5日(金) 7時起床
8時半朝食、鮭粥、しらすと蟹雑炊、昆布茶。10時、ヤンツォンさんと大通り迄出て路線バスに乗った。乗客はほとんどチベット族ばかりであるが、息子が私の為にいろんな乗り物を使うのである。
ポタラ宮の裏手を廻って西へ行った所に、1870年にダライ・ラマ7世が造営を始めたといわれる広大な離宮があった。歴代のダライ・ラマの離宮がそれぞれに建っているのだが最大の見どころは、ダライ・ラマ14世の宮殿「タクテン・ミギュ・ポタン」である。外観は歴代のダライ・ラマ達の離宮と同じくチベット様式であるが、内部は洋風でトイレ付きのシャワールームがあり、ロシアから贈られたラジオ、インドのネール首相から贈られたレコードプレーヤー等が飾られてあって、ダライ・ラマ14世の新しい物、進歩した電気機械への興味の強さがしのばれる。又タクテン・ミギュ・ポタンとはチベット語で「永劫普遍の宮殿」という意味である。
3月6日(土) 7時20分起床
朝食は部屋で日本から持参の山食シラス雑炊と鮭粥、トランクを下ろし正人がチェックアウトをして待つ。
9時、ラパ氏運転のトヨタのランドクルーザーでタンカホテルを出発、ラサの南端の町チュシュの食堂でラパ氏とヤンツォンさんが朝食のモモを買っている間近くのガソリンスタンドでトイレを借りた。チュシュを過ぎゴンガル空港への分岐点を左に進むと山南地区の山道に入り急な坂道を登り始める。30キロほど舗装された山道を進むと、タルチョのはためくオボといわれる石塚が立っていた。これが標高4749mのカムパ・ラ峠で、この峠がラサを中心とするウ地方とシガツェを中心とするツァン地方の境界地点である。
ヤムドク湖(高原牧場にあるトルコ石の湖を意味する湖。) カムパ・ラ峠を越えると突然眼下に青く澄んだ湖が現れた。これがチベット仏教四大聖湖のひとつヤムドク湖である。