夏季詠
夏季詠
本誌「作品七句と自句自解」より
高木 良多
青空へ玉解く芭蕉立ち上がる
笛の音に祭りの山車のぎいと発つ
神代植物公園 花樗風のある日は風に舞ふ
蟇目 良雨
吹き起こる千年前の蓮の風
本郷の坂のたのしも鷗外忌
日雷やさしき父をかなしめる
鈴木大林子
初夏の商店街をちんどん屋
皮脱ぎて素肌の光る今年竹
コーヒーを濃く熱くしてパリー祭
乾 佐知子
杖頼る一歩が茅の輪くぐりけり
魚板打つ寺に明るき今年竹
天竜川に落す水門虹立てり
井上 芳子
今年竹戒壇の柵閉ざさるる
拝観の静かな列や実梅もぐ
水晶の数珠の涼しや奈良土産
石川 英子
角兵衛獅子の背乘り肩のり青田風(月潟)
恋螢底ひの水の匂ひけり(岩室)
弥彦嶺の風ぞんぶんに風鈴屋
深川 知子
麦秋を抜け来て其角生誕地
水鶏鳴く川をそびらに翁句碑
二歳児の時に残酷蟻の列
花里 洋子
苗売りの声の過ぎゆく裏通り
虹の橋かかると電話母若し
越後獅子ゆかりの里や枇杷熟るる
元石 一雄
初蝉やこゑのみなぎる大欅
金柑の真白の花や雨はじき
山開き洞窟抜ける風を受く
堀越 純
午後の日を刻む水車や蝸牛
梅雨の堰真一文字にほとばしる
砂時計天地無用の大暑かな
(つづきは本誌をご覧ください。)