秋季詠
秋季詠
本誌「作品七句と自句自解」より
高木 良多
ペン皿にペン増え灯火親しめり
かん高き鴉のこゑや厄日過ぎ
金柑の色づくころや螢二亡し
蟇目 良雨
雲井より落ちてゐるなり神の瀧
流星や母のひと世もかく短か
父に詫ぶことあれこれと氷頭膾
鈴木大林子
音もなく出て行く船や秋の暮
吹かれ来て畳を歩む秋の蝶
月明や影絵のごとき沖の船
乾 佐知子
音たてて流木梁を崩しけり
パーカーや燈火親しむ父の夜
神杉の秀の黒ぐろと月冴ゆる
井上 芳子
秋暑し自宅に防空壕ありと
新小豆煮て壜詰めに母の友
子規の忌や万葉学者かつて住む
深川 知子
盆の客待つミニカーとブロックと
秋水を湛えて吉野離宮跡
鳥塚を背に蓮の実の飛びに飛ぶ
石川 英子
金銀の水引草咲かせ子規文庫
身に入むや子規終焉の間にランプ
一升壜に糸瓜水採る獺祭忌
花里 洋子
盆東風や水母あふるる浜しづか
開け閉めにカウベルの音秋暑し
時止まるままに子規庵秋思濃し
堀越 純
秋桜川風に影定まらず
一心に廻る水車や秋思ふと
観音の影うすくして台風圏
元石 一雄
ばった跳ぶ天覧山に吾も歩む
子の選びたる一本の竹を伐る
もみぢ葉を懐紙に包む二三片
(つづきは本誌をご覧ください。)