俳句とエッセイ「東京ふうが」平成28年夏季号

東京ふうが46号(平成28年夏季号)

八千草日記

(21)南天の実

高木良多

めくるめき雨雫下げ実南天   良 多

南天の実は歳時記によると副季語に「実南天」「白南天」「南天燭」を立てている。
植物大図鑑では「ときに白実のシロナンテン、または淡紫実のフジナンテンがある。果実は薬用となる。和名は漢名南天燭や南天竹の南天からついた。」と解説。
今年は秋になってから雨がつづき、颱風も28号にまで達し、伊豆大島など大変な被害を受けることになった。
掲句の上五「めくるめき」は目眩くからきていて目がくらむほどであるという意味につながり今年の颱風のはげしさを反映している。

南天の実に慘たりし日を憶ぶ  欣 一

も沢木欣一の中国大陸に出征したときの追想で、掲句もこの句が下敷にあるようである。

(25/10/27)

(つづきは本誌をご覧ください。)