夏季詠
季節の三句/夏季詠
本誌「作品七句と自句自解」より
高木 良多
植木屋の江戸弁がとぶ傘雨の忌
鯉をどる大き波紋や五月来る
夏蝶や大股でくる測量手
蟇目 良雨
麦笛を吹く水郷の艀妻
風呂の戸へ五十歩峡の五月闇
病む妻の幸や夕虹見えたると
荻原 芳堂
海鳴りや早苗の根付く安房棚田
早苗はや風呼ぶ丈となりにけり
梅雨寒や薄荷の匂ふ貼り薬
鈴木大林子
梅雨晴れて遠富士忽と現はれり
扇風機据ゑて導師を迎へけり
水草の花つけて来し婚の舟
井上 芳子
植物園の入場制限大暑かな
幻の一花の誘ひ炎天下
梨の幹登り降りして蟻の道
長沼 史子
亀石や大和三山緑さす
早暁の祝詞高らか青葉風
昨夜よりの雨降る歌碑や蝸牛
乾 佐知子
でで虫の登りきったる百度石
息かけて磨く銀皿梅雨晴間
幼子の両手で囲ふ螢の火
積田 太郎
帰省の子懐しき肩揉みほごす
父の日や父に似て来し顔の皺
森閑と竹の皮脱ぐ古刹みち
石川 英子
ダライ・ラマのお声涼しき法話かな
ダライ・ラマの法話に跳ねる梅雨鴉
万緑の山刀伐古道でありにけり (奥羽紀行)
(つづきは本誌をご覧ください。)