東京ふうが 24号(平成23年 冬季・新年号)

澤木欣一の沖縄諷詠 2

「澤木欣一の沖縄諷詠」

高木 良多

つぎの「コザ」の項はつぎの十句より成る。

27 金網に青芝あればすべて基地
28 長脛(すね)の赤毛に西日ジープ駆る
29 片蔭といふもののなし基地の街
30 日盛りのコザ街ガムを踏んづけぬ
31 冷房の鏡々に異邦の目
32 冷房に殺気流るる肉を切り
33 火鉢スタイルビーフステーキ炎昼に
34 アゲインといふ悪所なる裸か美女
35 逃げ水や墓地に日本の琴一つ
36 犬臭きアメリカホテル浴衣無し

 30の句の「コザ」は沖縄本島を南北に縦断する沖縄自動車道をへだて、沖縄市の東方にあたり、嘉手納飛行場の反対側にある。一九七四年コザ市と美里村が合併して沖縄市として発足、その中に米軍の嘉手納空軍基地があり、人口十一万七千となっている。いまも通称コザ十字路の名が地図の上にのこされている。
この固有名詞を一句の中に盛りこんだのであるが異様なひびきをもった句となっている。
米軍兵士のはきすてたチューイングガムであろうか。著者はそれをふんづけてしまったので靴底にすいつき、はがれないもどかしさを詠んだ句であるが、進駐米軍に対する抵抗感を強く実感として感じられる句となっている。
著者は長期間滞在していた沖縄であったが実際に現地で作句したのはこの一句だけで他は本土に帰ってからの追想句となっているとあとで述べられていたがそれだけに迫力のある句となっている。

(つづきは本誌をご覧ください。)