東京ふうが 30号(平成24年 夏季号)

夏季詠

季節の三句/夏季詠

本誌「作品七句と自句自解」より

高木 良多
祭太鼓欅大路にとどろけり
筑波より少年ファンや五月場所
百姓の森に仏法僧のこゑ

蟇目 良雨
真つ青な葉のつよくつく柏餅
夜盗虫むかし武蔵の闇深し
風鈴にあり遠き音近き音

鈴木大林子
我に似し羅漢に触れて夏惜しむ
古都涼し紺屋の長き通し土間
炎帝へ回転ドアー人を吐く

乾 佐知子
斑鳩の空濡れてゐる栗の花
ががんぼや裸電球煤けをり
投げ出して手足平らや夏座敷

井上 芳子
ガレージで水遊びの子五六人
夏料理オリンピックの記者帰国
プレスリーライブ映像冷房裡

石川 英子
向日葵やイーアルサンスー風の丘
フフホトへ夕映え美しき汽車の旅
馬駈ける夏野の果ても夏野かな (シラムレン)

花里 洋子
袖垣をのぼりゆるがぬ鉄線花
龍神の水音の中薬狩
朝靄に漠と浮かびし茅の輪かな

深川 知子
走り梅雨母に用なき電話など
ががんぼの玻璃打つ音のはたと消ゆ
胎内のごと夏掛を身にくるむ

元石 一雄
児と競ふ線香花火や古希迎え
日焼して大道芸に夢中な子
緑陰に井伊直弼の石碑かな

堀越 純
青嵐経典持てる観世音
緑蔭やバスのる時間きてしまふ
ががんぼの水面弾みつつゆけり

積田 太郎
家中が津波のごとし土用干し
冷索麺水音よろし貴船川
子が去りて残る夫婦に吊忍

(つづきは本誌をご覧ください。)