東京ふうが 31号(平成24年 秋季号)

秋季詠

季節の三句/秋季詠

本誌「作品七句と自句自解」より

高木 良多
物置きの扉を開け放つ草珊瑚
秋の蝶大道芸にまつはり来
澤木欣一句集鑑賞の稿成りて 二タ筋のみちのはたてや天の川

蟇目 良雨
三千年前の実の飛ぶ古代蓮
古稀過ぎてしみじみ美男葛かな
直情に老いたる父や木賊刈る

鈴木大林子
弁慶を肩に担いで菊師来る
休日の第九練習冬めけり
子規庵のガラス戸に触れ秋惜しむ

乾 佐知子
芒野の金波銀波のうねり合ふ
秋の蝶風化はげしき石仏
暮れてなほ風はさはがし蓮は実に

井上 芳子
葉のかげに花咲きてをり秋の蜂
親知らず痛むはらから秋の暮
秋天や水木しげるの紙芝居

花里 洋子
鱗雲せつせつ綴る訃の手紙
川痩せて堰板あらは蚯蚓鳴く
ひぐらしや砂場に残る児のシヤベル

深川 知子
ぼた山でありしが丘の草紅葉
鶏頭の紅に疲れや辻の供花
一人居にどすんと届く今年米

石川 英子
馬肥ゆる青き氷河の湧水に (香格里拉納帕海)
馬でゆく花野の果の山上湖 (香格里拉納帕海)
「松茸は今が旬よ」と串焼屋(香格里拉納帕海 独宗故城)

元石 一雄
柿の名を久保と応へり嵯峨野人
石州の茶席や秋の峰遥か
蓑笠を借りたき嵯峨の初時雨

堀越 純
浜菊や六角堂のよみがへる
身にしむや天心旧居の津波跡
天心の墓に栗の実供へられ

(つづきは本誌をご覧ください。)