八千草日記
(13)百合化して蝶となる
高木良多
百合化して蝶となりしや書庫に觸れ 良 多
歳時記では「昔からの伝説をそのまま季題としたもの」と解説し、副季語は立ててない。
私の家の書庫の錠前あたりをふらふらとさまようような蝶がきて真上にとんで行ったのを見て、この蝶はいま庭先に咲いている山百合が変化してとんできたものであろうかと一瞬思ったのである。
書庫にはいろいろな著者の書物があり著書には作者の靈気がこもっているのでその靈気に觸れて蝶も変化してきたものであろうかという伝説の真意を写実化して掲句のような句に仕上げたものである。
例句としても数少ない次のような句がある。
百合の蕊こてふの髭となりにけり 青 々
(25/6/19)
(つづきは本誌をご覧ください。)