東京ふうが 25号(平成23年 春季号)

曾良を尋ねて 8

曾良と神道

乾 佐知子

曾良が江戸に出てから吉川惟足の門下生となり、神道家として身を立てるべく早くから準備をしていたことは史実からも窺い知ることが出来る。
曾良は4歳で養子に出され武士の家柄の岩波家で育った。その養育先はまさに諏訪大社の境内から徒歩でも数分という近距離であった。少年曾良は朝な夕なに大社の雄壮な太鼓の音を耳にし、荘厳な神事に目を見張り、杉の大木の生い茂る境内を遊び場として育ったことであろう。五月に諏訪大社で七年毎に行われる「御柱」の大祭は、平安時代から続く重要な祭祀とされており、史実によれば曾良も体験したと思われる。
長じて仕えた先が伊勢の一角である長島藩であり、ここは全国でも最大の規模を誇る伊勢大神宮のお膝下である。曾良の神道に対する畏敬の念が一層強くなっていったのも、当然の成り行きであったと思われる。
ここで伊勢大神宮について簡単に説明しておきたい。伊勢神宮は皇大神宮(内宮)と豊受大神宮(外宮)の総で、祭神は内宮が天照大神(あまてらすおおみかみ)、外宮が豊受大神(とようけのおおみかみ)で皇室の氏神である。20年に1度社殿を新しく建てかえる遷宮という儀式がある。この遷宮に曾良は芭蕉と共に訪れているので一部紹介したい。

(つづきは本誌をご覧ください。)