平成30年春季佳句短評

東京ふうが 平成30年春季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報396回〜397回より選

草笛の止みて水音もどりけり    乾佐知子

草笛の音に隠れてしまうようなわずかな水音。田園の静かな光景が目に浮かぶ。

巣燕の声にひと日の新しき     深川知子

巣燕に声をかけて一日が始まる生活感に溢れる。

国曳きの神のまほろば春の雪  石川英子

出雲の神の神域にふる春の雪。「国曳きの神」と呼んで記紀の時代に遊んだ。

戻りたる日差しに桜あざらけし   河村綾子

日差しの変化に一喜一憂する作者の純情さ。

土蜘蛛の白き糸映ゆ薪能    大多喜まさみ

薪の火灯りに映える土蜘蛛の投げた糸の白さ。的確な表現になっている。