令和元年春季佳句短評

東京ふうが 令和元年春季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報408回〜410回より選

花衣足袋つぐこともなく生きて  知子

杉田久女は「ノラともならず足袋をついだ」が、作者は「足袋をつぐこともなく」ここまで生きてきてしまったと人生を振り返る。どちらの生き方も貴重であることに変わりはない。

修司忌や戯れに擦る古マッチ  洋子

修司の生き方は何にでも戯れに挑戦してゆく。駄目ならまた違うものに挑戦するというそんな人生。決して美しく作られたものではない。しかし、その戯れに試みることの大切さに作者は大切なことが秘められていると言いたいのだろう。戯れに擦った古マッチは点いたのだろうか。

仲見世といふ花道を荒神輿  絵津子

三社祭をずばりと表現した。仲見世を花道と表現するなんてちょっと気が付かなかった。仲見世があまりに長いので花道の表現に辿りつかなかったのかもしれない。堂々たる立句になった。