言葉で鎧というと地味な感じがするが、色彩豊かな鎧が多い。鎧の部分に色とりどりの菊が使われたために香が濃く立ったというのが句意。
敦煌の鳴砂山の砂が風に流されて音を立てる。旅宿の夜寒の光景。しみじみと味わいたい。
憲法改正を目論む輩が跋扈している。仮に傷がある憲法でも直し直し使えば、それはポンコツでもなく「戦争放棄」を詠う地球上で一番輝く憲法であり続けるはずである。野分の中でも投票に行き憲法を守る意思を表している。
雄大な雲の峰を仰ぎ見ていると厨から皿の割れる音がする。大自然の中の生活感の一瞬。自然の中に生かされている自分を見、普段の生活で妻子に生かされている自分を発見したのではないだろうか。
太宰の忌日に思わず自分の脈拍を指で確かめようとした。生きている自分、死んでいる太宰。ここに大きな壁が立ちはだかる。作者は己を鼓舞して太宰に近づこうとしたに違いない。
今年の暑さは「危険なほどの暑さ」が続いた。そんな暑さの中、ぐったりしているのは実は人間だけでなく羽化を待っていた多くの昆虫が羽化できずに死んでいたことを発見したのだ。
今でもこういう光景は見られるのだろうか。絵画教室のひとこまと思うが、ヌードモデルが蚊に刺されないように蚊遣豚が用意されている。木造の隙間のあるアトリエが想像される滑稽味を帯びた句。
橋本多佳子の華は小倉の櫓山荘に文人を集めていたころ。その忌日を偲ぶとき作者は玄界灘の波の眩しさを眼前にしている。多佳子の華々しさが髣髴としてくる。
草笛の音に隠れてしまうようなわずかな水音。田園の静かな光景が目に浮かぶ。
巣燕に声をかけて一日が始まる生活感に溢れる。
出雲の神の神域にふる春の雪。「国曳きの神」と呼んで記紀の時代に遊んだ。
日差しの変化に一喜一憂する作者の純情さ。
薪の火灯りに映える土蜘蛛の投げた糸の白さ。的確な表現になっている。